チェンジマネジメントの価値は測定可能Yes, You Can Quantify Change Management's Value

by Andrew Horlick

チェンジプラクティショナーたちは、チェンジマネジメントが変革にどれだけ寄与しているかを測定し、実感するのに苦労しています。この難しさの原因は、成功の定義が明確でないこと、成功を測定する指標が欠如していること、そして必要なデータを収集していないことにあります。こういった課題に直面すると、チェンジマネジメントの価値は測定できないという誤解が生まれかねません。しかし、Prosci®の包括的なアプローチを用いれば、あなたがサポートしている変革プロジェクトにおいて、チェンジマネジメントがどれだけ寄与しているかを測定し、その価値を実感することができます。

ステップ1:成功の定義を明確にしましょう


チェンジマネジメントがどれだけベネフィットの実感に貢献しているかを測定するためには、変革プロジェクトの成功の定義をすることが重要な一歩となります。以下の図で示すように、統合価値提案(Unified Value Proposition)は、チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントが共に成功を達成するという共通の目標に向かって協力することを示しています。

統合価値提案(Unified Value Proposition)

変革において、技術的側面(プロジェクトマネジメント)は、問題解決ためのソリューションの設計、開発、提供やオポチュニティに焦点を当てています。しかし、技術的側面にのみ焦点を絞ると、変革を単なる導入にとどめてしまいます。

一方、人的側面(チェンジマネジメント)は、影響を受ける個人やグループを巻き込み、ソリューションの設計、開発、提供に協力し、彼らが日々の業務でそのソリューションを受け入れ、活用できるよう支援します。

変革の成功は、技術的側面と人的側面の両方に焦点を当てることでのみ達成されます。この成功とは、変革の目標を達成または超えること、組織全体でベネフィットを実感することを意味します。

成功の定義をする際の役割


変革のプライマリースポンサーとチェンジプラクティショナーは、成功を定義し、成功を確実にするために重要な役割を果たします。プライマリースポンサーは、なぜ変革が必要なのか、また成功のあるべき姿を説明する責任があります。すなわち、変革プロジェクトの目標(何を達成すべきか)と、組織のベネフィット(組織が得るもの)を明確にする必要があります。

チェンジプラクティショナーは、成功の定義を引き出すために以下の質問を投げかける役割があります。

  • なぜ我々は変革をしなければならないのか?
  • 組織の問題やオポチュニティは何か?
  • この変革から組織は何を得ようとしているのか?
  • この変革プロジェクトが期待通りの成果を上げているか、どうしたらわかるのか?

成功の定義を明確にし、文書化し、説明するために、Prosciは4Pエクササイズを活用することを勧めています。このツールを使用すると、プロジェクト、理由、期待される成果、変革の詳細、影響を受ける人々を一枚の紙で整理できます。

ステップ2:ROIの内、人に依存する割合はどの程度か判断しましょう


次に進むステップは受け入れの測定です。受け入れもまた測定可能です。具体的には、変革のROI(投資利益率)を左右する要素や、人々がどれだけ日々の業務にソリューションを受け入れ活用しているかを測定します。

これを理解するために、2つの例を見てみましょう。プロジェクト1は、会議室にモーションセンサー電球を取り付けるプロジェクトです。プロジェクト2は、オフィスにリサイクルゴミ箱を設置するプロジェクトです。

プロジェクト1では、ほぼ人に依存しないROIです。なぜなら、ライトは入室時に自動的に点灯し、退出時に自動的に消灯するためです。対照的に、プロジェクト2では、ROIは人に依存する割合が非常に高く(75%以上)なります。なぜなら、このリサイクルゴミ箱は人々が正しくゴミを分別する必要があるからです。つまり、人々が行動を変えなければ、リサイクルゴミ箱のベネフィットを実感することができないのです。

特定の変革においてROIが人に依存する割合をどう測定するか


ROIが人に依存する割合を判断するには、結果や成果が社員の受け入れと活用にどれだけ依存しているか、その割合をプライマリースポンサーや主要なステークホルダーに聞くことが大切です。

そして、次に進む前に、以下の質問をしてみましょう。「組織が変革プロジェクトの予算を設定する際、社員が変革を受入れ活用するための予算は何パーセントになっていますか?」

リーダーへの鍵となる質問

この2つのパーセンテージの差異を理解し、リーダーシップと協力して変革の人的側面に投資する重要性を議論し、プロジェクトのROIが人に依存する割合を理解しましょう。

ステップ3:測定の方法を理解しましょう


成功の定義ができ、変革が開始されると、次はパフォーマンスを測定する段階に入ります。

何を測定するか


組織の成果は、個人の結果の集大成です。これを理解するに、Prosciは、パフォーマンスを3つのレベルで測定します。

  • 組織のパフォーマンス
  • 個人のパフォーマンス
  • チェンジマネジメントのパフォーマンス

組織と個人のパフォーマンスは成果を測定しますが、チェンジマネジメントのパフォーマンスは活動を評価します。

3つのパフォーマンスレベル

この3つのパフォーマンスレベルは、相互に依存しており、包括的なパフォーマンス評価の枠組みを提供します。パフォーマンス評価をする際には、チェンジマネジメントのパフォーマンスから始め、以下のレベル別の質問をしながら、組織のパフォーマンスに進みます。

  • チェンジマネジメントのパフォーマンス — チェンジマネジメントのパフォーマンスを評価する際には、以下の質問が重要です。「チェンジマネジメントをどの程度うまく出来たか?」チェンジマネジメントが成功しているかを判断するには、次の要素を見ます。準備、必要なスキルの習得、日常業務における変革の受け入れと活用をサポートするための効果的な支援です。
  • 個人のパフォーマンス — 個人のパフォーマンスを評価する際には、以下の質問がポイントです。「影響を受ける個人はいかに効果的に変革を受け入れ、活用したか?」多くの人が変革を受け入れ、能力を発揮できると、組織全体でベネフィットを実感しやすくなります。
  • 組織のパフォーマンス — 組織のパフォーマンスを評価する際には、以下の質問が重要です。「取り組みは期待通りの結果を生んだか?」成功は、プロジェクトの目標を達成または超過し、そのベネフィットが持続することを意味します。

どのように測定するか


これらのパフォーマンスを測定するには、各レベルで特定の行動が必要となります。

  • チェンジマネジメントのパフォーマンスを測定する — まず、プロジェクトの進捗状況を観察し、チェンジマネジメントの実施がプロジェクトのライフサイクル全体でどのように進んでいるかを報告します。さらに、チェンジマネジメントのベストプラクティスがどの程度実践されているかも評価します。これらの評価は、多くのチェンジマネジメントプラクティショナーにとって馴染みのある作業です。
  • 個人のパフォーマンスを測定する — ADKAR Modelを活用し、個人、あるいはグループがADKARの5要素を順調に進んでいるかを見ます。また、どの程度、個人が変革を受け入れ、活用しているかを、Speed of Adoption(導入のスピード)、Ultimate Utilization(最終的な使用度合い)、Proficiency(習熟度)で判断します。この3つの人的要素の測定方法は、変革の特性に応じて異なります。
  • 組織のパフォーマンスを測定する — プロジェクトの目標に向けた進捗を評価し、組織のベネフィットを実現し維持するために必要な努力を評価します。組織のパフォーマンスを測定するには、プライマリースポンサー、プロジェクトマネージャー、チェンジプラクティショナーがそれぞれ役割を果たす必要があります。

チェンジプラクティショナーは、Prosci Change Triangle (PCT) Modelを使用して、変革プロジェクトの全体的な健全性をモニターし、成功のために必要な4つの重要な要素を評価します。これには、成功の定義の共有、強力なリーダーシップやスポンサーシップ、効果的なプロジェクトマネジメントとチェンジマネジメントの実践が含まれます。

PCT Model
(Prosci Change Triangle)

2021年のProsci方法論の重要なアップデートは、成功をより詳細に分析することでした。これにより、プロジェクトの初期段階で、プライマリースポンサーと主なステークホルダーたちが成功の定義を共有しているかを評価します。この段階で、共通の理解が不足している場合、成功のビジョンを共有する方法を探る情報を入手できます。

また、PCTアセスメントは変革の成功を予測するための指標として機能します。繰り返し行うことで、変革プロセスが順調に進行しているか、是正措置が必要かどうかを判断できます。PCTアセスメントは、プライマリースポンサー、プロジェクトマネージャー、その他の主なステークホルダーと協力して、強みを最大限に活用し、リスクに対処し、調査や是正措置が必要かどうかを特定するのに役立ちます。

いつ測定するか


PCTアセスメントを使えば、変革プロジェクトのライフサイクルのどの時点においても、プロジェクトの総合的な健全性を精査することができます。プロジェクトのキックオフ、本稼働日や成果が持続段階に入ったタイミングなど、主要なマイルストーンで評価を行うべきです。

一方、ADKARアセスメントを使って個人のパフォーマンス評価をするには、適切なプロジェクトのマイルストーンで、5つのADKAR要素の達成度を評価するべきです。段階的なプロジェクトマネジメントのアプローチ(ウォーターフォール型)を採用する場合、Ability(能力)の達成を本稼働日に評価し、影響を受ける個人やグループがソリューションを受け入れて活用できるかを確認します。

段階的なアプローチ

一方、反復的なプロジェクトマネジメントのアプローチ(Agileなど)を採用する場合、リリースごとにKnowledge(知識)とAbility(能力)の達成を評価する必要があります。これによって、影響を受ける個人やグループがソリューションを受け入れて活用できる準備が整っているかどうかが明らかになります。変革の反復的アプローチを実行する場合、段階的アプローチよりもADKARアセスメントを実施する頻度は高くなります。

反復的アプローチ

チェンジマネジメントの価値を測定し伝える


チェンジプラクティショナーとして、我々は日々、チェンジマネジメントが変革の取り組みにもたらす価値を目の当たりにします。しかし、その価値をプライマリースポンサーに伝えることは容易ではありません。そのためには、成功の定義に関する共通認識を持つ、測定可能な指標を用意して説得力のある説明をする、プロジェクトのライフサイクル全体で評価と測定を行う必要があります。このプロセスを4Pエクササイズと組み合わせることで、3つのパフォーマンスレベル、PCTアセスメント、ADKARアセスメントが明確になり、チェンジマネジメントが変革プロジェクトのベネフィットをどのように実現するかを包括的に理解することができます。

チェンジマネジメント効果を測定する

チェンジマネジメント効果を測定するのは容易ではありません。今日のプラクティショナーたちは、チェンジマネジメントのフレームワークに測定戦略を組み込むことを求められています。かつて、チェンジマネジメントを測定することは、つかみどころのない複雑な作業だと思われていましたが、Prosciの調査から、チェンジマネジメント効果の測定方法の傾向が見えてきました。チェンジマネジメント効果の測定を、組織のパフォーマンス、個人のパフォーマンス、チェンジマネジメントのパフォーマンスという3つのカテゴリーで見ていきます。

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著者:アンドリュー・ホーリック (Andrew Horlick)
アンドリューは、Prosciのグローバル・ラーニング・プロダクツ・ディヴェロップメントのシニア・プリンシパルで、30年以上の経験を持つチェンジマネジメントプラクティショナー、講師、リーダーシップコーチです。彼の目標は、チェンジマネジメントプラクティショナーや変革リーダーたちが知識や能力を開発し、組織の変革を成功させるためのサポートを提供することです。