ビジネスを成功に導く7つのデジタル導入戦略7 Digital Adoption Strategies That Boost Business Success
by Teresa Hauck
デジタル導入には多くの落とし穴がありますが、新しいテクノロジーは生産性の向上をもたらします。我々のチェンジマネジメントにおけるベストプラクティス第12版の調査でも、回答者の45%がテクノロジー革新とDXが昨今の最大の変革だと答えています。一方で、デジタル変革プロジェクトは、組織の抵抗や統合の課題により頓挫することもあります。
この記事では、効果的なデジタル導入戦略について掘り下げ、典型的な落とし穴を回避する方法を説明します。この知見とチェンジマネジメントのフレームワークを併用すれば、ビジネスのユーザーエクスペリエンスを飛躍的に向上させ、抵抗管理に成功し、無理のない統合を実現できます。
組織の目標に沿ったデジタル導入戦略を適用することで、組織の課題を持続的な成功への契機に転じる方法を見てみましょう。
デジタル導入とは何か?
デジタル導入とは、ソフトウェアやデジタル製品、アプリケーション、ウェブサイトなどを日々の業務に継続的に統合していく作業です。それが結果的にビジネスの成果、社員満足度、生産性の向上につながります。
例えば、不動産会社で顧客関係管理(CRM)システムを全てのオペレーションに導入するとしましょう。このツールを導入することで、不動産会社は顧客データへのアクセスや更新、顧客との対話記録の確認、フォローアップを効果的に行えるようになります。これにより、顧客情報の管理に費やす時間を節約し、顧客対応に集中できるため、生産性や顧客満足度の向上が期待できます。
デジタル導入を効果的に行うためには、デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)との違いを理解することが重要です。
- デジタイゼーション(Digitization)
情報を物理的な媒体(アナログ)からデジタルに変換すること。例えば、図書館で書籍をスキャンしてPDFにする作業がデジタイゼーションです。情報は同じですが、電子的にアクセスできる形式に変わります。 - デジタライゼーション(Digitalization)
デジタルテクノロジーを活用してビジネスの効率化を図ること。例えば、商店がオンライン注文システムを導入することで、迅速な受注が可能になり、より多くの顧客に商品を提供できるようになります。 - デジタルトランスフォーメーション(DX)
ビジネス全般にデジタルテクノロジーを導入し、業務プロセスを抜本的に変革すること。例えば、従来の銀行が完全オンラインの金融機関に変わることなどが挙げられます。
デジタル導入は、デジタイゼーション、デジタライゼーション、DXを最大限生かすために欠かせません。
デジタル導入の重要性
2022年末までに企業の平均的なSaaS導入数は315を超え、ガートナーは2024年にはさらに6.8%増加し、5兆ドル規模に達すると予測しています。このように、デジタル導入の必要性は明らかです。
しかし、デジタルテクノロジーは社員や顧客が使いこなして初めて意味があります。以下に、デジタル導入の主なメリットを挙げます。
- 効率性の向上 — ルーティンタスクを自動化し、時間の節約とエラーの削減に貢献します。
- より良い意思決定 — データへのアクセスが容易になり、マネージャーも社員も迅速に情報に基づいた判断ができるようになります。
- 顧客満足度の向上 — デジタルツールを利用することで、顧客に迅速かつ個別対応のサービスを提供できます。
- 社員満足度の向上 — テクノロジーによって業務が効率化されると、社員の士気や生産性が向上します。
- 業務の円滑な遂行 — タスクの指示を迅速に受け取れ、冗長なメールを排除できるため、業務を早く完了できます。
デジタル導入戦略
デジタル導入戦略について考える前に、組織のチェンジマネジメントの成熟度レベルを診断することが重要です。現在のチェンジマネジメント能力の健全性を評価します。成熟度が高いほど、デジタル導入に成功する可能性が高くなります。
1. デジタル導入をビジネス成果の方向性に合わせる
ビジネス目標とデジタル導入の目標を完全に一致させ、社員に重要なプロセスの変化、最終的な成果を示しましょう。デジタルの変革プロジェクトを組織の目的に沿ったものにしましょう。そうすることで、オペレーションの効率性や顧客満足度など主なパフォーマンス指標(KPI)を向上できます。
例えば、ヘルスケアクリニックでは、新しいオンライン予約システムを導入することで、スケジュール管理が円滑になり、待ち時間が短縮され、サービスが向上し、効率性と満足度が向上します。
2. デジタルに向き合うための姿勢を理解し、育む
分析ツールを使って社員のデジタル導入に対する姿勢を把握し、改善点を見つけましょう。効率化を目指し、各部署のニーズに合ったデジタルツールを提供します。例えば、営業チームにはCRMソフトウェアを使って顧客情報を管理し、カスタマーサービスに役立てます。また、導入前に適切なトレーニングや試用機会を提供し、各チームがツールを効果的に使えるようにします。フィードバックを収集し、社員のツール使用状況を確認することで、デジタル導入の人的影響を評価しましょう。人々の仕事のやり方にどう影響するかも検証すべきです。また、企業文化が変革を支持するかどうかを確認し、その醸成に努めましょう。
3. 様々な社員のニーズに合わせたデジタルコンテンツを策定する
デジタル導入を推進するためには、従来のトレーニング方法では不十分です。必要なテクノロジースキルや業務役割、習得の得手不得手は組織内で異なります。この多様性に対応するため、個々の役割やニーズにカスタマイズしたガイドやアプリ内のガイダンスを提供しましょう。業種に関わらず、日常的に使うアプリ内に個別対応のコンテンツを用意することが重要です。
4. 絶え間ないフィードバックを基にデジタルツールを繰り返し適正化する
真のデジタル導入とは、社員がテクノロジーを最大限に活用できる状況です。そのためには、社員の使用度合いを評価し、向上させることが必要です。真のデジタル導入とは、社員がテクノロジーを最大限に活用できる状況です。そのためには、社員の使用度合いを評価し、向上させることが必要です。分析ツールを使ってテクノロジー導入のレベルを評価します。但し、アプリの使用時間といった尺度では、本当のことはわかりません。ユーザーのアプリへの関与具合、アプリに対する姿勢、経験値をモニターしましょう。これにより、成功している点や課題を把握し、必要なトレーニングを実施できます。
5. Prosciのチェンジマネジメントの考え方を活用して抵抗を克服する
デジタル導入が失敗する最大の原因は社員の抵抗です。変革の準備態勢や成熟度をきちんと見極め、チェンジマネジメント戦略を詳細に定義しなければ、社員は新しいデジタルツールの使用に抵抗します。これには、理解不足や変革に対する懸念、不十分なトレーニングが影響しています。
調査結果によれば、効果的なチェンジマネジメント戦略があれば、組織へのデジタル導入プロセスは7倍の確率で成功しやすくなります。
包括的なアプローチを持たずにテクノロジーの更新ばかりに気を取られると、重要な点を見落とす危険があります。例えば、ユーザーの準備不足やデータ整理が不十分なまま新しいERPシステムを導入する場合などです。
Prosciのチェンジマネジメントは、デジタル導入に関する課題に対応する体系的なアプローチです。Prosciの方法論には以下のものがあります:
- Prosci Change Triange(PCT)モデル — 変革プロジェクトの健全性に関わる重要な側面を示します。
- Prosci ADKAR® Model — 個人の変革をガイドし、変革の受け入れを妨げる要因を取り除きます。
- Prosci3フェーズプロセス — 変革を成功に導き、大規模に変革を受け入れるための体系的なフレームワークです。
Prosciは顧客に合わせたコミュニケーションプランと戦略を盛り込んだトレーニングを提供しています。これは後述します。
6. リーダーシップと変革の提唱者を活用する
デジタル導入を成功させるには、リーダーの支援が不可欠です。上層部のマネージャーがデジタル導入を支援することで、チームの士気とモメンタムが向上します。リーダー達が変革において重要な役割を果たすよう準備することが鍵となります。
企業全体で支援者チームを構築すれば、新しいデジタルツールを導入する士気が高まります。これらの言わばサポーター、チェンジエージェントは、ツールの使用促進やフィードバック収集を担当し、プロジェクトの推進に貢献します。また、小さな成功を祝うことで、デジタル導入に賛同する文化を醸成します。
7. チェンジマネジメントを推進する企業の協力を得る
実績のあるチェンジマネジメントプロバイダーと協力することで、以下の点でデジタル導入のサポートが得られます。
- 研究に基づくモデルやフレームワークの提供
- 専門的なスキルや経験による支援
- 実務的なサポートや能力開発の支援
これにより、組織の目標や文化を損なうことなく、変革を円滑に進めることが可能になります。例えば、Prosci認定チェンジリーダーはプロジェクトマネジメントとチェンジマネジメントを統合し、ERPシステムの導入やDXの支援を行います。
- 個別にカスタマイズしたコーチングの提供
- Prosciの方法論の紹介
- 各個人の役割やプロジェクトにその方法論を活用する支援
Prosciのアドバイザーからの支援により、社員はProsciの方法論を迅速かつ正確に導入する方法を学び、プロジェクトの遅延を防ぎます。研究によれば、優れたチェンジマネジメントを適用した組織は、格段に高い確率で成功しています。
ADKARがデジタル導入にどのように役立つか
デジタルテクノロジーを組織に統合するには、技術的側面と人的側面の両方が重要です。Prosci ADKAR® Modelは、デジタル導入の成功のための体系的なアプローチを提供します。
デジタル導入時の落とし穴:
- テクノロジーそのものに注目し過ぎ、ユーザーの準備を怠る
- 変革の理由やベネフィット、個人への影響を十分に説明しない
- 受け入れに関する明確な計画を立てることなく、新しいテクノロジーが社員に歓迎されると思い込む
- ユーザーが使いこなせるように十分なリソースを提供しない
- 社員が疲弊するほど多くの変革を同時に行う
ADKAR Modelは以下の物を構築し、デジタル導入を支援します。
- Awareness(認知) — 変革の必要性の認知
- Desire(欲求) — 変革に参加しサポートしようとする意志や欲求
- Knowledge(知識) — 変革を実現する方法に関する知識
- Ability(能力) — 必要なスキルと行動様式を実践する能力
- Reinforcement(定着) — 変革の維持と定着
持続的な成長のためのデジタル導入戦略
デジタル導入戦略と体系的なチェンジマネジメントを併用することで、持続的な成功を収めることができます。20年以上の経験からProsciはデジタル導入の課題とオポチュニティを熟知しています。さらなる成長を目指すあなたのために、効果的なデジタル統合を支援します。
【無料】変革の影響を定義する
チェンジプラクティショナーが直面する最大の課題は、組織レベルの変革を、個人レベルの変革に落し込むことです。その際、個人レベルの変革プロセスを意識して、目を向け、注意深く観察し、記録するためのフレームワークを持つことが重要です。「チェンジインパクトの10の側面」のフレームワークを活用すると、組織レベルの変革が個人の仕事にどのような影響を与えるかを分析することができます。また、これらの側面を考慮することで、変革がグループによって異なる影響を及ぼすことを早い段階で確認することができます。
著者:テレサ・ホーク (Teresa Hauck)
テレサ・ホークは、20年以上のキャリアを持つ組織変革の専門家です。複雑な変革やITシステム導入を主導してきました。十分な分析を重ねて戦略を練り、チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントの両方のベストプラクティスを活用し、ビジネスパフォーマンスの向上と組織の変革能力の強化を実現してきました。認定エグゼクティブコーチとして、変革期の関係構築や上層部へのコーチングに情熱を注いできました。テレサは、変革実践者のコミュニティの構築や企業間の知識共有を推進し、組織の準備状況の向上や持続的な成果を実現しました。彼女はジョージア大学で人事分野と組織開発の修士号を取得しています。