チェンジマネジメントにおける変革を持続させることの戦略的重要性The Strategic Imperative of Sustainment in Change Management
by Michelle Haggerty

組織のリーダーである皆さんは、変革というプロセスが短期間で完了するものではなく、長い道のりであることを理解しているでしょう。しかし、その成功は、変革を持続させることができるかどうかにかかっています。重要なのは、変革が組織に定着し、描いたようなビジョンを組織が実感できているかどうかです。簡単に言えば、持続できなければ、それまでの投資が無駄になる可能性があります。なぜ持続が重要なのか、持続がもたらす効果、そしてどのように持続させるかを見ていきましょう。
チェンジマネジメントにおける持続の意味とは
ここでは、変革を持続させることの重要性についてがテーマのため、サステナビリティ(持続可能性)のためのチェンジマネジメントとは区別して考える必要があります。チェンジマネジメントの「持続」は、変革を成功させるために欠かせないものですが、しばしば見落とされがちなフェーズです。持続の目的は、変革が受け入れられ、活用され、新しい業務スタイルとして定着し、組織文化の一部になることです。
リーダーが次の戦略や変革に気を取られ、持続のための取り組みを軽視してしまうことは珍しくありません。次の重要なプロジェクトに焦点を移してしまうと、持続のための努力が不十分になりがちです。しかし、過去のデータや経験は、持続が成功の鍵であることを示しています。
例えば、1年間の食事管理と運動によって50ポンド(約23キロ)の減量に成功したとして、その日で努力が終わるわけではありません。その後も食生活に気を配り、運動を続けなければ、その成果を持続することはできません。
チェンジマネジメントにおいても同様です。持続するための効果的なアプローチがなければ、変革プロジェクトが稼働期に手に入れた成果やベネフィット、ROIを持続することはできません。
変革に持続が不可欠な7つの理由
新しいERPシステムの導入やM&A後の再編など、どんな変革でも、初期の投資と努力が組織に長期的な価値をもたらすためには、チェンジマネジメントの持続が不可欠です。
Prosci®は、数十年にわたり顧客とともにチェンジマネジメントの調査を行ってきました。その結果、組織が変革を持続させるべき理由として、以下の重要なポイントが明らかになっています。
1. 古いやり方への回帰を防ぐ
持続することで変革は部分的にではなく、完全に目標を達成することができます。さもなければ、効率が悪く、無駄の多い変革に終わってしまう可能性があります。
2. やり直しを避ける
変革が持続されないと、トレーニング、コミュニケーション、スポンサーからの発信などのチェンジマネジメント活動をやり直す必要が生じる可能性があります。これは効果を弱めるだけでなく、コストも大きな負担になります。
3. プロジェクトの成功を確実にする
持続のための活動がなければ、変革プロジェクトが目標を達成できない恐れがあります。これはリソースの無駄になるだけでなく、次の変革プロジェクトに対する信頼を損なうことにもなりかねません。
4. 変革プロジェクトの目標や成果を最大限引き出す
持続することで変革は部分的にではなく、完全に目標を達成することができます。さもなければ、効率が悪く、無駄の多い変革に終わってしまう可能性があります。

5. チェンジマネジメントへの信頼を持続する
チェンジマネジメントの持続は成功につながりますが、持続のための努力を怠れば、チェンジマネジメントに対する信頼が損なわれ、チェンジマネジメントチームの信用も失われてしまいます。結果として、将来の変革プロジェクトに対して社員やステークホルダーが抵抗するようになり、さらなる成功が遠のいてしまいます。
6. 継続的な改善をもたらす
変革を持続させることで、将来の業務改善やイノベーションのための強固な基盤を築くことができます。後戻りすることなく、これまでの変革の成果を基に、新たな取り組みを推進することが可能になります。変革の成功により、社員は貴重な知識やスキル、前向きな姿勢を身につけ、さらなる成功へとつながります。
7. 投資利益率を最大化する
変革を持続することで、財務面、戦略面、業務面のすべてにおいて、変革プロジェクトに投じた投資から最大限のリターンを得ることができます。
チェンジマネジメントの持続は、単に変革プロジェクト後の状態を維持するだけではありません。組織全体に変革を浸透させ、価値を生み出し続けることで、最終的には戦略的な目標達成をサポートすることにつながります。
チェンジマネジメントの持続におけるベストプラクティス
効果的なチェンジマネジメントにおいて変革の持続は鍵を握る要素です。Prosciの調査によれば、効果的なチェンジマネジメントと変革プロジェクトの成功には強い関連性があり、非常に効果的なチェンジマネジメントの下では、目標を達成、あるいは超過する可能性が7倍に高まる事が示されています。

効果的なスポンサーシップ
効果的なチェンジマネジメントには、プロジェクトのライフサイクル全体を通して、積極的で目に見えるスポンサーシップが欠かせません。これは持続のフェーズでも同様です。Prosciの調査によると、非常に効果的なスポンサーがいる変革プロジェクトは、全く効果的でないスポンサーがいるプロジェクトに比べ、2倍以上の確率で目標を達成しています。ここに、変革の成果を持続するためのリーダーシップの重要性が表れています。
効果的なスポンサーは、持続のための計画に対して適切な支援を行い、変革プログラムの初期段階から積極的に関与します。調査回答者の62%が、スポンサーから一定の支援を受けていると答えています。さらに、目標を達成、もしくは超えたプロジェクトでは、リーダーシップから強力な支援が得られていました。
同様に、回答者の61%がチェンジマネジメントの持続に向けた活動計画を盛り込んでいたと答えています。そのうち、81%が目標を達成または超えました。一方、計画を盛り込まなかった回答者では、達成または超えたのはわずか15%にとどまりました。

チェンジマネジメントにおいて効果的に変革を持続させる方法
チェンジマネジメントにおいて変革の持続は極めて重要で、Prosci3フェーズプロセスでは、最終フェーズがほぼすべて、変革を持続させるための活動に焦点を当てています。Prosci3フェーズプロセスは、組織レベルでチェンジマネジメントを管理し、最適化するための体系的で再現可能なフレームワークです。
Prosci3フェーズプロセスのPhase3 – Sustain Outcomes(成果の持続)では、組織が導入した変革を長期的に持続させるために必要な活動を理解し、実行します。
具体的には、第3フェーズは以下の活動に注力します。
- パフォーマンス評価 ー チェンジマネージャーは変革の成果を評価し、学んだことを記録します。
- 持続化 ー チェンジマネージャーは組織が得た成果を持続させるために、重要な行動に移ります。
- 権限委譲 ー チェンジマネージャーは将来を見据えた活動を導入し、変革の持続を担う中心的な社員たちに変革に関する情報や資産を移譲します。
私たちは慎重に言葉を選んでいます。持続のための「計画」に着手するのではなく、「実行」に取り組むのです。成功の種は、変革の初期段階で蒔かれます。チェンジプラクティショナーたちは、プロジェクトの最終形を見据えたビジョンを持ってスタートする必要があります。チェンジマネジメントの始めに我々は成功の定義をしますが、その際すでに「完成形」の定義を共有しているのです。
— ティム・クリーシー(Prosciのチーフ・イノベーション・オフィサー)
変革の持続のためのリーダーシップの行動
リーダーとして、組織が変革を長期的に持続するためにどのように支援できるでしょうか。Prosciの25年以上にわたる調査によると、リーダーシップの支援こそが変革プロジェクトの持続に成功する最大の要因であることが明らかになっています。
変革の持続を後押しするためにリーダーができることには、以下のようなものがあります。
- 絶え間なく関与する ー シニアリーダーは、変革を持続させる活動に継続的に関わる必要があります。変革が運用段階に入っても、そこで終わりではなく、関与を続けることで、組織に変革の重要性を示すことができます。
- 勝利を祝福する ー リーダーが変革プロジェクトの成功を祝うことで、変革が組織に定着し、関わったメンバーの努力が認められます。
- 模範を示す ー シニアリーダーが変革の初期段階で自ら積極的に受け入れる姿勢を見せることで、組織全体に大きな影響を与え、他の社員もそれに倣うようになります。
- リソースを提供する ー 持続の段階に必要なリソースを適切に割り当てることは、変革の勢いを保つために不可欠です。
- 変革に責任を持つ ー リーダーは変革の責任を引き受け、ベネフィットを最大限享受できるまで変革を見守る必要があります。
チェンジマネジメントの持続で成功率を上げる
組織は、変革プロジェクトに投資した分、確実に成果を得たいと考えています。しかし、残念ながら、多くの変革プロジェクトは導入後に元の状態に戻ってしまうことがよくあります。持続に対する意識的な取り組みを行うことで、重要な変革によるベネフィットや投資利益率(ROI)を長期的に確保することが可能になります。
【無料】チェンジマネジメント戦略策定のための3つのステップ

チェンジマネジメント戦略の策定は、すべてのチェンジマネジメント活動に方向性と目的を与えます。チェンジマネジメント実務プロフェッショナルは、変革の特徴、これに伴うリスク、潜在的抵抗について記述することで、自身やプロジェクトチームのメンバーが成功するための土台を整えることができます。

著者:ミシェル・ハガーティ (Michelle Haggerty)
ミシェル・ハガーティは、Prosciで10年以上の経験を持ち、現在はチーフオペレーティングオフィサー兼米国代表を務めています。彼女はサービスのポートフォリオと内部オペレーションを管理し、サービスの戦略的方向性を定める役割を担い、サービス品質の責任者でもあります。オペレーショナルエクセレンスと顧客満足度を両立させ、企業がチェンジマネジメントのベネフィットを最大化し、変革プロジェクトの成果を達成できるよう支援しています。