変革の飽和状態を軽減する6つの対応策6 Strategies for Reducing Change Saturation

by Andrew Horlick

組織の変革は、質と量の両面で減少の兆しは見られません。最新のProsci®のチェンジマネジメントにおけるベストプラクティス調査によれば、回答者の53%が、2025年までに変革が著しく増加すると予測しており、35%が多少の増加を予測しています。多くの急務の変革プロジェクトが進行中であり、そのため変革の飽和状態が発生し、その影響も懸念されています。ここでは、チェンジリーダーや組織が採用できる対策について紹介します。

変革が過多になると


人々が受け入れ、活用できる能力を超えるペースで、組織が次々と変革を導入しようとすると、変革の飽和状態が生じます。最新のProsciのチェンジマネジメントにおけるベストプラクティス調査によれば、73%以上の回答者が、自分の組織が変革の飽和状態に近づいている、または既に飽和状態にあると報告しています。

Source: Prosci Research Hub

変革プロジェクトにとって、変革が飽和状態になることはリスクです。これは社員のストレスを引き起こし、変革疲れを生む要因です。変革に対する適応力の低下や仕事に対する不満まで、さまざまな問題が浮上します。国際的なビジネス環境が常に変化しているため、変革プロジェクトをスポンサーとして支えるシニアリーダーたちは、変革のスピードをコントロールできないと感じることがあります。彼らは、社員たちは変化の波にただ乗るしかないと考えることがあるでしょう。しかし、シニアリーダーたちは、変革の飽和状態がもたらす悪影響を軽減すべきです。

変革の飽和状態にどう対応するか


以下に、プロジェクトの導入前、導入中、導入後にできる変革の飽和状態の軽減策を6つ挙げます。

1. プロジェクトの案件リストを作成し保守する


案件リストには、組織内において現在進行中や計画中の重要な変革プロジェクトを含めます。このリストを使用して、変革を必須のものと任意のものに分類し、それぞれのプロジェクトの戦略的重要性を評価します。必須の変革とは、外部の圧力によって変革を余儀なくされるケースで、競合他社の動きや、制度の改正などがその要因となります。任意の変革とは、組織内部から必要性が生じたケースで、新しい製品やサービスの開発、新技術の投入、継続的な改善計画の導入などが考えられます。

2. 導入する変革を積極的に精査する


意識的に導入する変革の量を管理します。各変革がどの程度ビジネス戦略上、重要であるかを評価し、重要でないプロジェクトは排除しましょう。次に、あなたが効果的に支援できない変革は、延期や中止とし、残りの変革に集中して、プロジェクトのポートフォリオに優先順位をつけましょう。

変革の飽和状態を管理するためには、シニアリーダーシップチームの全メンバーが積極的に関与して、ポートフォリオ内の変革を成功させる必要があります。さらに、組織の現在の変革能力を正確に評価することが非常に重要です。パンデミックの影響で、多くの組織が変革に対する余力を少し持つようになりましたが、将来的に予期しない出来事や強制的な変革に備えて、ある程度の余力を保持することをお勧めします。

3. 優先順位の高い、またはハイリスクの変革に体系的なアプローチを適用する


この体系的なアプローチには、人的リスクの評価、必要なチェンジマネジメントのリソースの把握、期待通りの成果を上げるための作業に関する評価も含みます。専任のチェンジマネジメントリソースと予算を確実に確保してください。人々が業務の傍ら、ついでにチェンジマネジメントをすることのないよう注意しましょう。

Prosci3フェーズプロセス

4. 組織内において偉大なスポンサーとなる


積極的で目に見えるエグゼクティブのスポンサーシップは、変わることなく、最も重要なチェンジマネジメントへの貢献要素となっています。Prosciの調査では、1998年の調査以来、一貫してそのことが証明されています。

成功は自信を生み、組織の変革能力を高めます。スポンサーシップのABCを示し、直属の部下たちに模範を示しましょう。

  • 積極的にかつ目に見える形でプロジェクト全体に参加する
  • サポート体制の連携を構築する
  • 社員と直接コミュニケーションを取る

5. プロジェクトのベネフィットを長期的に達成、測定、維持する


プロジェクトの本稼働の目標日を設定するのではなく、期待通りのベネフィットが実現し持続する予定日を設けることが大切です。プロジェクトマネジメントとチェンジマネジメントを統合する場合、持続のフェーズも考慮に入れましょう。そうすれば、獲得したベネフィットを維持し、プロジェクトチームからオペレーションチームへのスムーズな引継ぎが可能になります。

エグゼクティブに対しては、変革を始めたことに対して報酬を与えるよりも、ベネフィットの実感と持続を実現したことに対する報酬を盛りこんだパフォーマンス評価ルールを提示した方が有効です。

6. 変革の飽和状態に対して常に敏感でいる


変革に影響を受ける個人と定期的にコミュニケーションを取ることで、彼らの変革の飽和状態を把握し、変革疲れが出ていないかを確認できます。変革疲れが起こると、組織内にさまざまな問題が生じる可能性があります。

  • 管理職マネージャー

ProsciのADKAR Model(Awareness(認知)、Desire(欲求)、Knowledge(知識)、Ability(能力)、Reinforcement(定着))に基づいて質問して、管理職が変革でリーダーシップを発揮できているか確認しましょう。

  • 現場社員

現在の変革で直接影響を受ける社員と頻繁に対話し、ADKAR Modelを使って、変革を受け入れ、活用できているかを評価しましょう。

  • スポンサーとプロジェクトマネージャー

スケジュールの重複やリソースの制約など、変革の取り組みに同時に影響を及ぼす要因について、協力して対処しているか確認しましょう。

社員との直接的な関与に加えて、顧客満足度を評価することも、変革の負の影響を把握するのに役立ちます。関与度、無断欠勤、保留率など組織の健全性の指標を観察し、社員の変革疲れを察知しましょう。そして、当然、これらの負の影響を予測することで、今後の変革計画を立てる際に問題を未然に防ぐことができます。

変革の飽和状態は現実の課題となっている


プロジェクトチームが複数の変革プロジェクトを抱えると、これらが組織や個人に影響を及ぼす可能性が高まります。上記の対応策を念頭におけば、明確なアクションプランを策定し、強力なチェンジマネジメントチームを構築することができます。

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著者:アンドリュー・ホーリック (Andrew Horlick)
アンドリューは、Prosciのグローバル・ラーニング・プロダクツ・ディヴェロップメントのシニア・プリンシパルで、30年以上の経験を持つチェンジマネジメントプラクティショナー、講師、リーダーシップコーチです。彼の目標は、チェンジマネジメントプラクティショナーや変革リーダーたちが知識や能力を開発し、組織の変革を成功させるためのサポートを提供することです。