デジタルトランスフォーメーションのリーダーとして成功するためにHow To Be a Successful Digital Transformation Leader

by Isabella Brusati

デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業全体に影響を及ぼす複雑でリスクの高い変革です。その成功には、プロセスを導き、意思決定を行い、定着を推進するリーダーが欠かせません。

スムーズな移行のためには、Prosci®の方法論など、体系的なチェンジマネジメントを活用することが肝要です。本ガイドでは、DXの概要、リーダーの役割、そしてチェンジマネジメントによる成功のポイントを解説します。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?


デジタルトランスフォーメーション(以下DX)とは、デジタル技術を業務やプロセスに統合し、ビジネスのあり方を根本から変えることです。この大規模な変革は、現状を見直し、継続的に挑戦し続ける企業文化の醸成が不可欠です。

2023年時点で、93%の組織がすでにデジタルファーストのビジネス戦略を導入している、または導入を予定していると答えています。Prosciの調査によると、10,800人以上のチェンジマネジメント専門家へのアンケートで、DXは2024年以降、最も重要な変革課題になると予測されています。

DXには主に以下の側面があります:

  • テクノロジーの統合 ー クラウド、AI、ビッグデータ解析、IoT、ブロックチェーンといった技術を活用し、プロセスやサービスを改善する。
  • プロセスの改善 ー 業務プロセスの改善 – 自動化による業務の最適化により、効率を高め、コスト削減、顧客満足度向上を図る。
  • ビジネスモデルの革新 ー サブスクリプションサービスやプラットフォーム提供など、デジタル技術を活かした新たなビジネスモデルを開発する。
  • 顧客満足度 ーデジタルツールを介して顧客ひとりひとりに合わせた設定、即時対応の対話や評価を可能にすることで顧客との連携やサービスを向上させる。
  • 組織文化の変革 ー 組織全体でイノベーションやアジリティ(俊敏性)、継続的な改善を推進する文化を醸成し、部署間の協力を促進する。さらに、社員のデジタル能力を高める。

ナイキデジタル社は、DX成功事例を生み出しました。ナイキは顧客とのつながりを深め、オンラインと店舗の販売を強化するために複数のアプリを展開し、2022年には、ナイキ全体の26%の利益を生み出し、コロナ禍の影響を乗り越え、競争力を高めました。

デジタルトランスフォーメーション(DX)のリーダーとは?


DXのリーダーとは、DXプロジェクトの変革を承認・管理する立場にある人物です。この役割には、戦略的なビジョン、技術的な専門知識、強力なリーダーシップスキルが求められます。

リーダーは、変革の過程で重要な役割を果たします。その役割を十分に果たすためには、上級経営層からの支援を得ること、リスクを適切に管理すること、そして社員が変革を受け入れられるようにするためのチェンジマネジメント戦略が必要です。

DXリーダーは最新の技術に精通し、それがビジネスモデルにどう影響するかを理解していることが求められます。戦略を策定し、組織が最新の機会や傾向に対して投資できるように注力します。また、取締役会、チェンジマネジメントの専門家、その他関係者と協働して、DXプロジェクトを管理します。

組織の構造や目的に応じて、DXのリーダーは、チーフデジタルオフィサー(CDO)、チーフインフォメーションオフィサー(CIO)、チーフテクノロジーオフィサー(CTO)など、様々な名称で呼ばれることがあります。

DXリーダーの主な責任:

  • 戦略構想 ー ビジネスの目標に合わせて、明確なDX戦略を立てる。
  • データに基づく意思決定 ー 意思決定や成功の測定、DXロードマップの修正などにデータ分析を活用する。
  • チェンジマネジメント ー チェンジマネジメントの専門家と協力し、デジタルによる変化を仕事に取り入れ効果的に活用できるよう準備を行う。
  • プロジェクトマネジメント ー DXプロジェクトの計画から実行、導入までを監督し、プロジェクトマネジメントチームと協力してタスクを期限内かつ高品質で完遂させる。
  • 協働 ー IT、マーケティング、オペレーション、ファイナンスなど、様々な部署と連携し、デジタル変革が組織全体で円滑に統合されるよう調整する。
  • リソース配分 ー DXの期間中、予算とリソースの管理を効果的に行う。
  • パフォーマンスモニタリング ー 重要業績評価指標 (KPI)を活用し、成功を測定し、改善点を特定する。
  • リスクマネジメント ー DXに伴うリスクを特定し、そのリスクを軽減するための戦略を立てる。

DXのリーダーは、変革の過程で社員と連携し、彼らを導く必要があります。Prosciの「管理職マネージャー向けチェンジマネジメントプログラム」に参加することで、DXリーダーの役割を理解し、成功するための知識とスキルを習得することができます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)のリーダーが直面する課題


複雑な変革にはさまざまな課題が伴いますが、効果的なチェンジマネジメントによって、多くの問題を軽減することが可能です。以下は、代表的な課題です。

  • 信頼の欠如 ー 多くの社員やステークホルダーは、CDO(チーフデジタルオフィサー)の信頼性に疑問を持つことがあります。変革への抵抗感や、経験、スキル、知識の不足、または非現実的な期待などがその背景にあります。
  • リソースの制約 ー 予算、人員、テクノロジーなどリソースの制約があると、リーダーにとって障壁となります。これにより、CDOがいくら変革を進めたくても、必要なトレーニングや育成のための資金が不足し、プロジェクトが失敗するリスクが高まります。
  • 時間の不足 ー エグゼクティブやステークホルダーは早急な結果を求めがちですが、DXには時間が必要です。短期間で成果が見えないと、社員がリーダーシップや変革そのものに不信感を抱き、抵抗が強まる可能性があります。
  • 役割の重複 ー CDOの役割は進化し続けているため、期待される責任や果たすべき役割が明確でないことがあります。さらに、CIOやCTOと役割が重複することで、混乱が生じることがあります。
  • 他のリーダーとの不明確な関係 ー CDOは取締役や特にCEOとの明確な関係を築くのに苦労することがあります。

これらの課題を克服するためには、変革の人的側面を深く理解することが極めて重要です。チェンジマネジメントの専門家と協力することで、デジタル変革のリーダーがサポートやリソースを得るために必要な関係構築、コミットメントの確立、役割の明確化が可能になります。

チェンジマネジメントを活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功に導く

DXを成功させるためには、社員が新しいテクノロジーを理解し、創造性を発揮できるような組織文化を育むことが不可欠です。

ただし、組織文化の変革には時間と労力がかかります。意図した成果を達成するには、人々が新しい働き方を受け入れ、それを大規模に実践する必要があります。だからこそ、Prosciの方法論のような実績のあるチェンジマネジメント手法が非常に役立つのです。

Prosciの調査によると、効果的なチェンジマネジメントを導入した変革プロジェクトは、そうでなかったプロジェクトと比較して、成功率が7倍以上となっています。

Prosciの方法論は、DXにおける人的側面を推進しCDOがDXの成果を実現するための、体系的かつ反復可能なアプローチです。これにより、目標達成に必要な重要な要素をしっかりと押さえることができます。

1. 積極的で目に見えるスポンサー


DXを成功させるためには、組織全体でスポンサーが必要です。スポンサーは、場合によってはビジネスリーダー、エグゼクティブ、あるいはシニアマネージャーが務めることになります。

デジタルリーダーは、チェンジマネジメントの専門家と協力して、スポンサーの役割を明確にし、彼らがその役割を果たせるよう支援します。チェンジプラクティショナーは、定められたチェンジマネジメントの手法に基づき、スポンサーのコーチングや活動の計画、社員とのコミュニケーションをサポートし、スポンサーが効果的に責任を果たせるようにします。

このようにスポンサーを支援することで、彼らの影響力を最大限に引き出すことが可能です。Prosciの調査では、効果的なスポンサーシップが変革プロジェクトの目標達成に直接結びつくことが示されています。

2. コミュニケーションの促進


DXを進めるリーダーは、移行期間を通して常にプロジェクトマネジメントの専門家や、チェンジマネジメントのネットワーク、取締役会、ステークホルダーとコミュニケーションを取ることが求められます。しかし、時間的な制約や多くの責任の中でこれをこなすのは容易ではありません。

チェンジマネジメントの専門家は、デジタルリーダーがリーダーやステークホルダー、社員に対して、ビジョンや目指す姿、それぞれへのメリットなどを効果的に説明するためのコミュニケーションプラン策定をサポートします。
このようなコミュニケーションを通じて、全員が情報を共有し、信頼を築き、明確な期待値を設定することで、抵抗を減らすことができます。

効果的なチェンジマネジメントは、適切なタイミングで、正しい情報を適切な送り手から発信することで、コミュニケーションをより良くします。例えば、Prosciのチェンジマネジメントにおけるベストプラクティスでは、社員の58%が変革の個人への影響について、直属の上司から情報を得たいと考えていることが報告されています。

3. 社員へのサポート


DXのリーダーは、変革に社員をしっかりと巻き込まなければなりません。効果的なコミュニケーションとスポンサーシップに加え、社員がデジタル変革を受入れ活用できるよう準備と知識を身につけさせる必要があります。

Prosci ADKAR® Modelは、個人が変革を受け入れ、適応するための段階的なアプローチを提供しています。このモデルを用いることで、デジタル技術を含む大規模な変革に対する抵抗を少なくし、スムーズな受け入れと活用を促すことができます。ADKAR Modelとは、変革を成功に導くために個人が達成すべき5つの要素の頭文字をとったものです。それは、Awareness(認知)、Desire(欲求)、Knowledge(知識)、Ability(能力)、Reinforcement(定着)です。

チェンジプラクティショナーは、CDOと協力して、変革の過程で障害を取り除き、適切なトレーニングやコーチングを提供することで、社員が個々の変革プロセスを進められるよう支援します。

4. リソースとリスクの管理


DXリーダーは、変革プロジェクトを予算内かつスケジュール通りに完了するよう、リソースを適切に管理する必要があります。

リソース管理には、チェンジマネジメントに必要な資金計画と専任のリソースを確保することも含まれます。Prosciの調査では、チェンジマネジメント専任のリソースが確保されている場合、そのプロジェクトが良いまたは非常に良い結果となることが明らかになっています。

Prosciの方法論は、確立されたチェンジマネジメントのプロセスを導入することで、変革チームが期待される成果を達成できるようサポートします。

Prosci3フェーズプロセスには、3つの詳細なフェーズがあります:

  • Phase1 – Prepare Approach(アプローチの準備)
  • Phase2 – Manage Change(変革のマネジメント)
  • Phase3 – Sustain Outcomes(成果の持続)

各フェーズにはカスタマイズ可能な対策やツールが用意されており、重要な活動を段階的に実施し、集中的に取り組むことができます。

各フェーズを進める中で、チェンジプラクティショナー、デジタルリーダー、そしてステークホルダーたちは、成功の定義を共有し、その目標に向かってプロセスを計画します。確立された成功の評価基準を定義・設定し、パフォーマンスを評価し、プロセスの過程で必要に応じて修正を加えます。さらに、リスクを見極め、成功のさまたげとなる要素を予測し、それらを軽減する措置を講じます。

5. 定着の計画


DXは、変革が長期的に受け入れられ、定着して初めて成功と言えます。そのため、リーダーは定着の促進と、それを持続させるための活動を計画する必要があります。

報酬、表彰、是正措置、祝賀イベント、フィードバックなどの定着のための活動は、社員が新しい働き方に取り組み続け、変革を持続させるのに役立ちます。

定着は変革の成功に不可欠です。調査によれば、定着や持続のための活動を計画に組み込んだ場合、81%の参加者がプロジェクトの目標を達成、あるいはそれを超えたと報告しています。

定着を確実にするためには、変革に対するパフォーマンス評価を継続的に行うことが大切です。リーダーや管理職マネージャーは、この評価を通じて新しいシステムやプロセスを受け入れた社員に対して報奨を与えることができます。

パフォーマンス評価は、チェンジマネジメント戦略のどこが効果を発揮していないのか、改善すべき領域がどこにあるのかを特定することにもつながります。効果的なリーダーは、このデータを基に対応策を修正し、変革をより強力に支援します。

Prosciを活用してデジタルトランスフォーメーション(DX)のリーダーとして成功する


DXの取組みには、システム、文化、プロセスを再構築する強力なリーダーが必要です。こうしたリーダーは、変革に伴う様々な課題に対応するため、チェンジマネジメントの専門家と連携し、変革の人的側面を適切に導いていきます。

Prosci方法論のような、研究に基づく、実証済みのアプローチを導入することで、リーダーはDXの成功に不可欠な導入・定着レベルを確保しながら、ビジョンの策定、リーダーシップの発揮、そして技術的な側面に集中することができます。

【無料】チェンジマネジメントにおける役割

チェンジマネジメントの最終的な目的は社員のエンゲージメント力を高め、新たな仕事のやり方を採用するよう鼓舞することで、組織が結果や成果を出すための原動力となることです。変革の対象がプロセス、システム、職務内容、組織体制のいずれであれ(あるいはそのすべてであっても)、個々の社員が日々の行動を変え、新たなやり方で仕事をするようになったときに初めてプロジェクトは成功します。これこそがチェンジマネジメントの本質です。

無料ダウンロード

著者:イザベラ・ブルサティ (Isabella Brusati)

イザベラ・ブルサティは、Prosciヨーロッパ(旧CMCパートナーシップグローバル)の支部長であり、英国、アイルランド、イタリア、シンガポールを含む多くの国々でサービスを提供しているProsci認定アドバンストインストラクターです。また、イタリアのチームリーダーとして、チェンジマネジメントに関する20年間の実績を基に、DXやその他の困難な変革において、グローバルの顧客を成功へと導いてきました。イザベラは、ブログライター、ウェビナー講師、会議での講演やゲスト講師としても活動し、顧客が効果的な変革リーダーになるためのコーチングも行っています。