チェンジマネジメントへの前向きな取り組みを促す5つの質問 

5 Questions to Ask to Get Buy-In for Change Management

by Tim Creasey

重要なのはそれが正しい状況で機能しているかどうかだこちらは7つの習慣』の著者としても知られる経営コンサルタントのスティーブン・コヴィーの言葉ですチェンジマネジメントが正しい状況で真価を発揮し、その価値にふさわしい優先順位得られるようにするにはどうすればよいでしょうか  チェンジマネジメントをどのように説明するか考えてみてください。プロジェクトリーダーたちはチェンジマネジメントをどう捉えていでしょうかプロジェクトを成功に導く頼もしい援軍というより、あってもなくてもいい付属品見る人もいるでしょうか互いにコミュニケーションをとったり、研修を行ったりするチェンジマネジメント活動について話し合っていますか?あるいはチェンジマネジメントがプロジェクト全体の成果にもたらす恩恵に目を向けていますか  驚かれるかもしれませんが、チェンジマネジメントの価値について論じる際のキーポイントは、(少なくとも最初は)チェンジマネジメントについて語らないことである場合があります。チェンジマネジメントを重要事項と位置づけるなら最初に経営陣プロジェクトリーダーたちが気にする話題から始めなくてはなりません。つまり組織としてベネフィット獲得とプロジェクトの目標達成です。ここに挙げる5つの質問を投げかけることであなたの会話「チェンジマネジメントを実行するためにどんなリソースが必要か?」から人的要素に依存するプロジェクトの目標達成50パーセント、80パーセント、もしくは100%パーセントを成し遂げるためには、どのようなリソースが必要か?」といった具合に変わることでしょう。 

質問1:このプロジェクトは何を達成しようとしているのですか? 


この質問には、2つの役割があります驚くべきことに、誰からもこの問いが発せられないまま、プロジェクトは進行していくこともありますこの質問は、チェンジマネジメントの価値をおおまかに説明するのに役立つだけでなく、チームメンバーとリーダーがプロジェクトを全体的に理解するために不可欠す。もし何を達成しようとしているのかを知らないとしたら、どのようにプロジェクトの効果を測ることができるでしょうか? 質問1への具体的な答え、次の2つの質問で得られるはずです 

質問2:このプロジェクトは組織にどんなベネフィットをもたらしますか? 


組織が得られるベネフィットは、新たな取り組みを導入する上でハイレベル推進理由となります。例えば、収益増、法令順守、顧客満足度の向上などが考えられます 

質問3:このプロジェクトの具体的な目標は何ですか? 


具体的な目標とは、すなわちこのプロジェクトから生まれる成果です。多くの場合、これらの目標は具体的で測定可能であり、結果的に組織が得られる利益達成に繋がります。プロジェクト目標の例として、「新たなCRMシステムで全ユーザーがセールスリード(見込み客)情報を把握できるようにする」「これまで3日かかっていた顧客への回答までの時間を2日に短縮する」などが挙げられます。 

人的要因との関連づけ 

ベネフィットプロジェクト目標明確になったらこれらを人的側面に結びつけることができるようになります。上記で定義した組織的なベネフィットとプロジェクト目標には、2つの要素が含まれているはずです。ひとつは、ソフトウェアの構築や新システムの導入など技術的ソリューションによってベネフィットを得ることです(技術的側面)。もうひとつは、人的な側面からベネフィットを得ることです(人的側面)すなわち、このプロジェクトで影響を受ける社員一人ひとりが、仕事の進め方を変える必要があります。プロジェクトの目標達成と組織全体のベネフィット獲得を叶えるには、技術的側面と人的側面の2つの要素を組み合わせる必要があります。 それでは、ベネフィット獲得と目標達成が人的要因に依存する度合いを測るにはどうすればよいでしょうか。一つひとつのベネフィットと目標に注目して、次の2つの質問をしてみてください。 

質問4ベネフィットのどの部分が、人が変革を受け入れ利用するかどうかに依存しますか? 


プロジェの性質によって個人が変革を受け入れ利用すること目標達成相関性は異なります例えば、サーバーの容量増設など技術的側面の要素が強いプロジェクトの場合、個人が変革を受け入れるかどうかは目標達成に対してあまり関係がありません一方で、多くのプロジェクトの成功が、社員の変革の導入と利用に大きく左右されることも事実です。例えば、「コミュニケーションの円滑化」を目指したプロジェクトの目標達成は人的要因に大きく依存します。一人ひとりが新たなコミュニケーションのとり方を受け入れこれまでと違うやり方で仕事をする必要があるからです。

質問5:誰も仕事のやり方を変えようとしない場合、得られるベネフィットは何パーセントですか? 


この質問は「帰無仮説」と呼ばれる概念に基づいています。プロジェクトの目標達成がどれだけ人的要因に依存しているか納得させてくれる質問です。人的要因への依存度によっては、プロジェクトのためのソリューションを人々が受入れて実践しなければ、得られるベネフィットはごくわずかか、あるいはゼロかもしれません。上記の質問に対して、たいていの人は0から20パーセントと答えます厳密に技術的なベネフィットや目標に限定して質問した場合には80から100パーセント高い数値を答える人がいるかもしれません。しかし、大部分のベネフィットや目標については、誰も仕事のやり方を変ないと仮定すると0から20パーセントという非常に低い数字しか出てこないはずです 実際には、誰も行動を変えないということは考え難いでしょう。それでも「誰も変わろうとしなかったら?」と問うことによって、人的側面から変革を起こすことがプロジェクトにとってどれほど重要か、しっかり理解してもらえるずです。またこれは、チェンジマネジメントを受け入れて実践することで、いかに多くのベネフィットが得られるかを基本的に理解させてくれる質問でもあります。 

それでは、次にするべきことは? 

5つの質問を通して、プロジェクトで得られるベネフィットの大きさは、人々が仕事のやり方を変えられるかどうかにかかっていることを、相手に理解してもらうことができました。しかし質問を振り返ってみると実はチェンジマネジメントについては、まったく触れていません!会話の流れを変えて、期待通りのベネフィットを得るには人が変革を受け入れ利用することを促進するが必要であることに気づいてもらっただけです。次にするべき質問は今回のプロジェクトにおいて、“受け入れる”こと“使用する”こととのような意味を持ちますか?」、また受け入れ使用をどのように増やしていけばよいでしょうか?」の2つです。 


著者:ティム・クリーシー(Tim Creasey)プロサイ(Prosci)のチーフイノベーションオフィサー(CIO)。チェンジマネジメントのオピニオンリーダーとして、世界的な評価を受けている。変革の人的側面を管理し、組織としての結果を生み出すことに関して、世界最大規模の知識体系基盤を形成している。