ハイブリッドな職場を計画する―考慮すべき10の領域―10 Areas to Consider When Planning for Hybrid Workplaces

by Debbie McCarthy

「職場復帰」という変革を計画する際、組織がすぐに気づくのは、それは自分たちが知るパンデミック以前のビジネス体制に戻るわけではないということです。実際、賢明な組織はこの機会をチャンスと捉えて、組織のイメージ転換や適正化を模索します。

ハイブリッドな職場への変革を管理する


職場に「戻る」ことを決めた場合、それがいつになろうとも、その変革のための計画を立てることが非常に重要です。鍵となるのは、どの仕事をオフィスに戻すべきかを明確にすることです。それがわかれば、誰が戻るべきで、その規模も明確になります。将来の職場のために、組織のどの側面を変革すべきなのか、何が重要になってくるのかを見極めましょう。

柔軟な活動をもたらすフレームワークを導入することで、あなたの決断を合理化することができます。決断を「なに?」「だから?」「では、なにをする?」と分割することで、たとえ情報が限られていたとしても、フォーカスするべき点を明確にし、効果的に計画を立てやすくなります。このアプローチは非常に明解であり、まず観察をして、次に結論を導き出し、それに基づいて現れた課題に対処すれば良いのです。

以下に職場復帰の計画を立てる際に考慮すべき10の領域を挙げます。

1. 必要なスペース


なに?

職場復帰にあたり必要となるスペースを明確にしましょう。そのためには、戦略的な職場の構造設計、施設管理、物件のイメージ転換、リノベーション、コワーキング、在宅オフィス、人間工学、ソーシャルディスタンス、およびその他の衛生基準に関する問題を含めて検討しましょう。

だから?

一度決断したら、関連する事項を調整する必要があります。オフィスを構えること自体が可能かどうか、一時的なコワーキングスペースを利用するか、それとも専用エリアを用意するかなどの選択肢を検討する必要があります。また、自分の席に強いこだわりがある人もいることを軽視してはいけません。自分用のスペースがないことに感情的になり、強烈な反応を示す場合もあります。自分の好きな写真を置けない、自分専用のごみ箱がないなどの理由からです。これらの点は後々、抵抗の原因となる可能性があります。

では、なにをする?

彼らがADKAR®のライフサイクルのどこにいるのかを明確にしましょう。抵抗を予測し、彼らがバリアを乗り越えられるよう手助けしましょう。さらに、方針や基準をどのように策定するかを考えましょう。この変革をどのように実現し、新しい業務プロセスに人々をどのように慣れさせるかを検討しましょう。

2. 社員との関わり


なに?

社員との関わりを積極的に管理し、つながる方法を模索し、テクノロジーとバーチャルの環境を整えることで、チームワークを構築します。

だから?

給茶機周辺やカフェスペースでの日々の井戸端会議に皆、飢えています。こうした何気ない会話から、リアルな人間関係が築かれるのです。私たちは、バーチャルでつながっていたり、ハイブリッドな職場環境にいる人々との関わり方を意識的に探る必要があります。

では、なにをする?

チームワークを構築するための具体的な方針を策定したり、ミーティング前にオンラインでつながったり、バーチャルで集まる機会を設けたり、関係性を築き、つながる方法を見つけるための時間を確保しましょう。

3. 期待管理


なに?

私たちは、就業時間、自由度、制約、柔軟な就業方針、成果の評価方法、目標設定などについて明確な期待と欲求を持っています。

だから?

まず、現在選択されているアプローチへの賛同を得ることは重要です。また、将来的に現れるであろう抵抗に備えるために計画することも大切です。職場復帰初日の期待や欲求と、当初のワクワク感が冷めて「家でスリッパを履いてZoomできたのは本当に良かった。電車通勤も嫌だし」と思うようになる14日目の期待や欲求は同じではありません。私たちチェンジリーダーが忘れてはならないのは、ADKAR Modelがいかに俯瞰的であり、その中のDesire(欲求)を再評価する必要があるということです。

では、なにをする?

どのような選択肢、制約、アプローチがあるかを伝え、職場復帰という変革に対する彼らの期待や欲求を管理しましょう。最初から抵抗への対処を計画に入れること、コミュニケーションをオープンにしておくこと、生じる問題に対処することが極めて重要です。

4. ハイブリッドなコミュニケーション


なに?

リモートまたはハイブリッドな職場、多角的なコミュニケーション方法、多様なバーチャルコミュニケーションチャネル、画面上のルール、コミュニケーションに関する期待などに関する戦略です。

だから?

現在、ほとんどの組織はリモートワークがうまく機能する点や課題を理解しています。では、これまでの経験をどのようにハイブリッドな職場に活かすことができるでしょうか。

では、なにをする?

Eメール、チャット、Microsoft Teams、Slackなど、複数の手段によるコミュニケーションを意識的に活用することも重要な方法です。また、「Zoom疲れ」を理解し、画面上のルールを設けたり工夫をすることも考えられます。例えば、毎週金曜にチーム向けのビデオ更新を行うなどのアプローチがあります。さらに、チームがコミュニケーションにおける制約を設けることも大切です。在宅勤務では、知らず知らずのうちに仕事が深夜や週末に及ぶことがあり、社員の燃え尽きを招く恐れがあるためです。

5. 文化を守る


なに?

既存の組織文化を尊重しつつ、新しい文化やリモートによるつながりの構築、新しい考え方や態度の醸成、そしてリモートで信頼関係を築くことです。

だから?

自分たちの文化や組織の姿、課題に目を向けてみましょう。既に関係性を築ける協力体制や信頼関係のある文化があれば、バーチャルやハイブリッドな職場環境に移行してもそれらは維持できるでしょう。一方で、各人がばらばらの組織や信頼関係が欠落している場合は、バーチャルやハイブリッドな職場環境になると状況がさらに悪化することが考えられます。

では、なにをする?

組織の雰囲気はリーダーによって大きく影響されます。そのため、リーダーは模範的な態度を示す必要があります。バーチャルやハイブリッドな職場でも、組織の持つ価値観を守り続けるために、あなたがリーダーであるならどのように対応しますか?

6. 必要なテクノロジー


なに?

在宅勤務をする際のサポート、ITセキュリティ、ネットワークなど、バーチャルやハイブリッドな職場に必要なテクノロジーです。

だから?

柔軟なテクノロジーを有しているかどうかは、組織によって明暗の分かれる大きな問題です。ある組織にとっては重要な強みとなり、一方で別の組織にとっては大きな障壁となることもあります。あなたの組織はどうでしょうか?必要なテクノロジーは何か、更新すべきシステムは何か、社員が効率を上げるべき領域は何か、よく考えてみましょう。

では、なにをする?

丁寧に計画を立ててチームメンバーを支援すれば、彼らは必要なツールを確実に手に入れ、そのスキルを身につけることができます。さらに、在宅でも出社でも使用できるように、ツールを重複して用意してあげましょう。仕事をしようとする際に適切なツールが揃っていない事ほど、もどかしいことはありません。

7. 共有スペースの管理


なに?

収容人数の上限、床面積、共有スペースを必要に応じて管理することです。

だから?

使用可能なスペースや各部屋の上限人数について考慮する必要があります。好ましくない行動を回避するために、会議室やオープンスペースの予約ポリシーや手順を事前に決定しておく必要があります。さらに、新しいハイブリッドな職場のポリシーに対する抵抗にも対処する必要があります。

では、なにをする?

収容人数を超えないようにするために必要なポリシーや手順は何でしょうか?会議室を一日中、占有されることを避ける方法は何でしょうか?また、新しいルールをどのように伝え、反対意見をどのように抑えることができるでしょうか?

8. ハイブリッドでつながる


なに?

職場からミーティングに出席する人もいれば、オンラインで参加する人もいるでしょう。

だから?

リモートの人が1人でもいればミーティング全体をリモートで行わなければなりません。

では、なにをする?

対面参加とリモート参加の間のギャップを埋めるために、ハイブリッド環境に適したテクノロジーを活用し、リモート参加者の関与も確保する必要があります。これを実現するためには、どのような方法が考えられるでしょうか?

9. 求人や採用のアプローチ


なに?

リモートでも応募の機会を与えて採用活動を実施します。

だから?

リモートで採用活動を行えば、より広範囲で優秀な人材を見つけることができます。しかし、このプロセスによって雇用や着任もバーチャルになることを意識する必要があります。

では、なにをする?

ただ単にオンライン面接を行うだけではありません。新しい社員が入社した後も、対面で働いていなくても組織に属していると感じられるよう、意識的にサポートしていくことが重要です。そのようなつながりを築くためには、どのような方法が考えられるでしょうか?

10. トレーニングのあり方


なに?

トレーニングと学習方法の運用について考え直しましょう。

だから?

ハイブリッドな職場で働くということは、トレーニングもバーチャルと対面の両方を並行して行う必要があります。それぞれ異なるスキルセットを要します。

では、なにをする?

複数の画面や異なるソフトウェアを使ってバーチャルと対面のトレーニングを行う方法を理解するためには、どのような計画を立てるべきでしょうか?必要なスキルやサポートは何でしょうか?彼らを確実に成功させるためには、何をすべきでしょうか?

「職場復帰」を計画する


職場復帰には、組織によってさまざまな意味があります。出社する場合も、完全にバーチャルに留まる場合も、それらをハイブリッドで行う場合も、計画を立てることが重要です。特に、在宅勤務が長期間続いた人たちにとって、この変化が大きな意味を持つことを軽視してはいけません。通常の変革とは異なります。これは、貴重な機会であり、グローバルに人材を獲得し、効率を上げ、社員のワークライフバランスを改善する絶好のチャンスなのです。


著者:デビー・マッカーシー (Debbie McCarthy)

デビー・マッカーシーは、Prosciのアドバイザリー・サービス部門の責任者であり、企業の顧客エンゲージメントを担当するチェンジアドバイザーたちから成る専門チームのリーダーです。彼女は組織の変革力構築をサポートし、新たなプラクティショナーを育成し、重要なプロジェクトのチームを成功へと導き、変革期間中にエグゼクティブが重要な役割を果たせるようにコーチングします。デビーはアフリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカにおいて、幅広い業種で複雑な変革をリードしてきました。