チェンジプラクティショナーが直面する最も差し迫った5つの課題The 5 Most Pressing Challenges Change Practitioners Face Today

by Karen Ball

私たちは顧客のパートナーとして、彼らの課題に取り組む際に、まず彼らの懸念を丁寧にヒアリングし、問題の核心を把握するよう心がけています。そして次に、Prosci®の調査データ、モデル、方法論を活用して、実行可能なアプローチを提案するようにしています。

以下に挙げるのは、チェンジプラクティショナーたちが共有したり、Prosciやあなたのようなプラクティショナーが指摘したりした、チェンジプラクティショナーが直面する上位5つの課題です。

チェンジプラクティショナーの典型的な課題


1. チェンジマネジメントへのコミットメントやリソースをどのように獲得するか


チェンジマネジメントへの賛同とリソースは、価値を示すことで獲得できるものです。この価値は、変革プロジェクトが期待通りの成果を上げたときに明確になります。リソースを単に要求するのではなく、「組織に対して、チェンジマネジメントの価値をどのように伝えるべきか」という観点で考える必要があります。

チェンジマネジメントの価値をわかりやすく説明するには、具体的な状況下で次のように問いかけるのが良いでしょう。

  1. このプロジェクトの投資にはなにが用意されているか?(予算、人員)
  2. プロジェクトから期待される成果とは何か?(組織のベネフィットや目標)
  3. 全体的な結果と成果の内、何パーセントが変革の受け入れと活用に依存しているか?
  4. 受け入れと活用が期待通りでなかった場合のコストやリスクは何か?
  5. より速く、より完璧に受け入れと活用が実現できた場合、どのようなベネフィットや価値が生まれるか?

質問c.は、チェンジマネジメントの価値を判断する上で重要な要素となります。リーダーたちにこの質問をすると、ほとんどの方が80%、90%、100%と答えます。この次に尋ねるのは、期待通りの成果を実感するためにチェンジマネジメントにどれだけの投資を行っているかという点です。

2. 変革の受け入れを促進し抵抗を低減するにはどうしたら良いか


チェンジマネジメントの価値が示されると、リーダーたちは変革の人的側面に対処することが受け入れと活用への最善策であることを理解するようになります。しかし、変革の抵抗について説明すると、彼らはその後、どうすべきか分からなくなることがあります。

この疑問を言い換えると、あらゆる変革プロジェクトの目標は期待通りの成果を達成することです。受け入れも抵抗も変革の際に人々が示す反応ですが、どちらもAwareness(認知)とDesire(欲求)に密接に関わる要素です。したがって、次のように質問を言い換えることができます。「変革の成果を改善するためには、受け入れと抵抗にどのように対処すれば良いでしょうか」。

まず、意識すべきことは、私たちがプロジェクトの課題ではなく、受け入れに向き合っているということです。抵抗の姿勢は、新しい仕事のやり方への変化に起因するのか、それとも変革そのものに起因するのかを考える必要があります。抵抗に関する面接やワークショップの実施は、人々の思いや課題、懸念を明確にするのに役立ちます。問題はコミュニケーションにあるかもしれませんし、適切なトレーニングが不足していることや、変革による喪失感かもしれません。受け入れとは具体的に何を意味するのか、自分に影響する変革にどう向き合っていくのかを説明することで、状況が好転する可能性があります。

3. 変革の飽和状態、変革疲れ、燃え尽きにどう対処すればよいか


多くの組織、そしてもちろんProsci内でもよく聞かれるのは、一度に多くのことが起きていて、その速度も速いということです。テクノロジーの変革、パンデミック関連の変革、ズーム疲れ、私生活と仕事の線引きの難しさなどが含まれます。これらは全て、個人のレジリエンスに影響を及ぼし、燃え尽きを招く原因となります。しかし、これらの状況に影響を与える全ての要因を理解し、他の選択肢を探ることで、根本原因に対処することが可能です。

この疑問は次のように言い換えることができます。「変革の飽和状態、変革疲れ、燃え尽きを引き起こしているものは何か。」

Prosci Change Saturation Model

変革の飽和状態は、変革力と阻害要因と関係しています。組織の変革力は限界があり、その要因として組織の文化、過去の変革、構造などが挙げられます(左)。一方、阻害要因は進行中の変革に関連するものです(右)。飽和状態への対処には、変革力を向上させるか、阻害要因を低減させるかが必要です。例えば、過去に組織が変革に失敗した経験がある場合、変革力は低いと考えられます。変革の必要性のAwareness(認知)を高めることで、変革力は向上します。また、阻害要因に目を向けると、変革の数を削減することは難しいかもしれませんが、より良いコミュニケーションや変革を統合することによって、阻害要因を低減することは可能です。

4. 組織の変革成熟度と変革力を構築するにはどうしたら良いか


変革力を構築する前に、まず組織内で共通理解を確立する必要があります。変革力は、1つのプロジェクトとして取り組むべき組織のコンピテンシーです。そのプロジェクトを私たちは企業チェンジマネジメント(ECM: Enterprise Change Management)と呼んでいます。この質問を言い換えれば、「変革力をどのようにプロジェクトとして取り組むべきか」という質問になります。

あらゆる変革と同様に、ECMにおいても、まず成功とプロジェクトの目標の定義から始めます。スポンサーを見つけ、プロジェクトチャーターを作成し、組織の現在の変革成熟度を評価する必要があります。また、チェンジマネジメントの成熟度の望ましい将来の状態を明確にし、その目標に向けて実行可能なステップを計画します。さらに、企業の変革力を構築するために、管理職やマネージャーが必要な準備を整え、シニアリーダーをコーチングし、抵抗を管理します。

Prosci Change Management Maturity Model™

Prosci Change Management Maturity Modelを使えば、あなたの組織の現在の状況を評価し、5段階の中でどのレベルに組織の成熟度があるかを判定できます。この評価ツールを使用することで、チェンジマネジメントの成熟度を定義する5つの変革力の領域を詳しく調査し、あなたの組織の位置を数値化することが可能です。そして、その数値を基にして戦略を練り、目標までの進捗状況を把握することができます。

5. パンデミック後にどのように人々を新たな職場環境に移行させるか


多くの人にとって、これは非常に重要な課題となっています。私たちは変革の技術的側面を十分に理解しているでしょうか(何が変わるのか)。そして変革の人的側面をしっかりと理解しているでしょうか(誰が変わるのか)。また、「職場」とは一体何を意味するのでしょうか。

この質問を言い換えると、「『職場復帰』という変革を実現するには、どうすれば良いでしょうか」となります。職場復帰のソリューションとして、何を設計、開発、展開すれば良いか、つまり、職場のイメージ転換が求められます。そして、この変革に関わり、受け入れ、活用するのは誰なのでしょうか。また、人的な影響はどのようなものが考えられるでしょうか。

ここ15か月の間、私たちは顧客とこの問題について協議してきましたが、彼らは私たちに復帰という考えを改め、イメージ転換という視点を持つようにとアドバイスしてくれました。多くの組織は時間をかけて、職場とは何かを問い続け、前進するために業務がどうあるべきかを考えてきました。私たちと一緒に取り組んだ多くの人は、コロナ以前の世界に戻ろうとしているのではなく、この機会を捉えて新たな方法を模索しています。

Prosciとパートナーを組む意義


Prosciは、組織の変革を通して人々をサポートすることに情熱を注ぎ、信頼を得ながら多くの方々のパートナーとして成長してきました。経験を積み重ねる中で、チェンジマネジメントの実務は進歩し、発展してきました。顧客やコミュニティからも多くの学びを得ており、私たちの調査に基づいたベストプラクティスを発行してきました。そして、今日のより差し迫った変革の課題に立ち向かう皆様を成功に導くために、私たちは今後も成長し続けます。


著者:カレン・ボール (Karen Ball)
カレン・ボールはProsciのリサーチ、プロダクト、マーケティング(RPM)のEVP(上級副社長)です。認定チェンジマネジメントプロフェッショナル(CCMP™)で、マスターインストラクターです。彼女は、顧客が変革を成功裏に達成すべく画期的なソリューションを提供することに情熱を傾けています。カレンは、35年のキャリアを活かし、Prosciのソートリーダー記事、ブログ、ウェビナー、ファシリテーター、講演者として、対面・バーチャル両面で登壇しています。