人が周囲の環境の変化にさらされたとき、抵抗の行動をとるのは自然なことであり、一般的な反応です。これは家庭や職場での変化にも当てはまります。たとえ、その変化や解決策によって社員の状況が改善されると思っていたとしても、抵抗をとることがあります。チェンジマネジメントを実施することで、抵抗が起こることを予測し、計画し、人々が変革を効果的に受け入れ、活用できるようになります。

組織内の特定の変革について、その変革施策を実施し始める前に、抵抗がどこから来る可能性があり、それにどう対処するかを考えることが重要です。例えば、現在のやり方に既に大きな投資をしているグループから抵抗が発生することが予想されます。また、組織内で最も大きな変化を受けるグループや、過去に変革が失敗したグループから抵抗が発生することも予想されます。抵抗がどこから発生しそうかを積極的に特定することは、抵抗に対する計画を立て、人々が変革への障壁を乗り越える助けになります。

プロジェクトのライフサイクルの早い段階で、抵抗がどのようなものか、抵抗がどこから発生しそうなのか、抵抗を緩和するためにどのような対策が取れるかについてブレインストーミングします。この「抵抗の予防」こそが、抵抗管理の主要な手段です。

社員が抵抗的な行動を示すと、それはプロジェクトや組織全体にとって重大なリスクとなります。社員には常に共感的でなければいけませんが、抵抗的な行動は、プロジェクトの遅延、目標の未達、投資収益率（ROI）の低下、あるいは変革の完全な失敗につながる可能性があることを忘れてはなりません。新しいプロジェクトの立ち上げ時には、抵抗に関連するリスクと、それをどのように軽減し始めることができるかを特定し、文書化するようにしましょう。

多くの組織が、抵抗の症状にのみ対処し、抵抗の根本原因に直接対処しないという罠に陥っています。社員がなぜ変革に抵抗しているのかを理解し、その根本原因に直接対処するための方法を準備することが重要になります。

Prosci のチェンジマネジメント ベストプラクティス調査では、社員が変革に抵抗する最も大きな理由として、「変革のビジネス上の目的に関する認識不足」を挙げています。変革を管理する責任を負うのであれば、この認識のギャップと、ベストプラクティスに挙げられている抵抗のその他の一般的な理由に対処することが必要です。

抵抗は、特定の理由によって個人レベルで発生します。ある社員の変革に対する考え方は、たとえ同じ職場であっても、別の社員の考え方とは大きく異なるかもしれません。ADKAR Modelのような個人のチェンジマネジメントモデルは、一人の個人がどのように変革を経験していくかを理解するための土台であり、特定の個人が変革に抵抗する本当の理由を理解するためのツールとなります。

Prosciの3フェーズプロセスでは、抵抗が組織に影響を及ぼす前に予防することに重点を置いていますが、変革の実施中に抵抗が発生した場合にも対応できるように準備しておく必要があります。このような「抵抗への対応」においては、チェンジプラクティショナーと管理職マネージャーがとる具体的な行動を策定し、文書化することが必要です。

最も効果的な抵抗管理者は、通常、変革に抵抗している人の直属の上司です。例えば、変革に抵抗する支社長がいる場合、直属の副社長が介入すべきです。同様に、コールセンター担当者が変革に抵抗している場合、その社員の管理職マネージャーが、抵抗に対処する最善の立場にあります。プロジェクトチームのメンバーとして、あるいはチェンジマネジメントのメンバーとしての仕事は、組織全体の管理職マネージャーが抵抗に対処し、変革プロセスを通じて社員を支援できるよう、準備し、環境を整えることです。