コミュニケーションを成功させるための秘訣Why Some Communications Work and Others Don’t

by Tim Creasey

多くのプロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーは、変革の時期にはコミュニケーションが不可欠だとして積極的に動きます。しかし彼らの多くは、”チェンジマネジメント”とは効果的なコミュニケーションをすることだと勘違いしています。さらに問題なのは、人々がプロジェクト自体について、何が起こっているのか、いつ実行されるのかについて知りたがっていると誤解していることです。しかも、人々はプロジェクトチームからこれらの話を聞きたいと考えている、と勘違いしています。

コミュニケーションの送り手、受け手について調査してみると、プロジェクトチームは誤ったメッセージを誤った送り手から送り、自らの変革プロジェクトに悪影響を与えることがあることがわかっています。ここでは、変革によって影響を受ける人々が本当は誰からメッセージを聞きたいのか、また、効果的なコミュニケーションをどのように行えばよいのかについて明らかにします。

チェンジマネジメントにおけるコミュニケーションの送り手と受け手の考え方


チェンジマネジメントでは、変革は常に、送り手の視点と受け手の視点の両方を考慮します。

  • 送り手とは、変革に関する情報を提供する人物です。
  • 受け手とは、変革に関する情報を受け取る人物です。

通常、変革の初期段階では、送り手と受け手が真の対話に参加しているとは言い難いです。両者の間で誤解が生じ、送り手のメッセージが完全に受け手に伝わるとは限りません。

大規模な組織の変革プロジェクトを考えてみてください。管理職マネージャーがチームメンバーと話し合っている場面を想像してください。マネージャーは情熱を持って前向きな情報を共有し、変革のビジネス上の理由や、変革をしなかった場合のリスク、組織の構造を迅速に変える必要性など、鍵となるメッセージを全て伝えます。管理職マネージャーは、このプロジェクトはやりがいがあり、楽しみであると強調するかも知れません。しかし、チームメンバーが帰宅後に家族に語る際、「もう自分は仕事を失うかも知れない」「会社は問題を抱えている」というようにすり替わっていることが珍しくありません。

管理職マネージャーが95%の会話をビジネス関連のことに費やし、チームメンバーに関することはたったの5%だけ話すことがあるかもしれません。しかし、家庭での会話ではこの比率は逆転します。管理職マネージャーが当初伝えたビジネス関連の情報のほとんどが右耳から左耳に抜けてしまうのはどうしてでしょうか。それは、変革の影響を受ける人々は失業の不安や変革に対する懸念で頭がいっぱいになっているからです。

変革に関する情報を受ける際、以下のような要因がその受け止め方に影響します。

  • 新たなキャリアや学びの計画
  • 家庭の状況や人間関係
  • 職場での過去の変革の経験
  • 友人や同僚から聞いた情報
  • 現在の自分のパフォーマンス
  • 送り手に対する信頼度

これらの要因は受け手ごとに異なり、変革に直面する課題も個々に異なります。受け手側の多様性を考えると、影響を受ける人々との適切なコミュニケーションがいかに重要であるかが理解できます。

鍵となるメッセージの好ましい送り手


Prosci®のチェンジマネジメントにおけるベストプラクティスでは、人々やグループは変革の期間において、メッセージの送り手として誰を望んでいるかを調査しており、その調査結果は長年にわたり一貫しています。意外なことに、彼らはプロジェクトチームからプロジェクトの変更について聞きたいとは思っていませんでした。むしろ、具体的なメッセージは直属の上司から聞きたいと考えています。

ビジネスや組織に変革が与える影響については、人々は通常、責任者、一般的にはエグゼクティブやシニアマネージャーから聞きたいと考えます。彼らが知りたいことは次のとおりです。

  • なぜ変革をするのか?
  • 変革しないことのリスクは何か?
  • この変革と組織のビジネス方針は一致しているか?

一方、直属の上司からは、変革が日常業務にどのような影響を与えるかなど、次のようなことを聞きたいと考えています。

  • 変革は私や私たちのグループにどのような影響を与えるか?
  • この変革は私の日常業務にどのような影響を与えるか?
  • 私にとって何の利益があるのか(WIIFM)?
  • 私たち(チームまたはグループ)にとって何の利益があるのか?

人々はプロジェクトの詳細をプロジェクトチームから聞きたいはずだ、と思われがちですが、影響を受ける立場にある人々はその前に、なぜ変革が起きているかというAwareness(認知)と変革に参加するDesire(欲求)の構築が先決であることが調査結果からもはっきりしています。つまり、プロジェクトチームが新しいプロセス、新しいシステム、プロジェクトのスケジュールをいくら唱えても、人々は聞く耳を持ちません。彼らはまず、自分たちが最も懸念している問題について、好ましい送り手から情報を聞く必要があります。

情報の行き違いや誤解


変革期におけるコミュニケーションでは、送り手と受け手の考え方に、もう一つ重要な点があります。送り手が発する言葉がそのまま受け手に届くことは稀であり、特に初期段階ではこの傾向が顕著です。これは、正しい送り手からのメッセージであっても同様です。

経験豊富なチェンジプラクティショナーは、作成されたコミュニケーションプランに基づいて情報を共有し、適切な人々を巻き込むことを理解しています。一方で、管理職マネージャーは、しばしば自分のチームメンバーが情報をどのように受け取ったかを検証することを怠ります。情報を発信し終えると、彼らは任務を完了したと考え、日常業務に戻ります。

影響下にある人々が意図したメッセージを正しく理解したと仮定するのは誤りであり、実際には彼らは発信された情報のほんの一部しか受け取っていません。そして、その受け取った情報をそれぞれの状況に応じて解釈します。人によっては聞いたことを拡大解釈したり、疑問に対して勝手な結論を導き出したりします。また、これらの勝手な結論は往々にして、事実より悪い見立てになっています。これらの解釈や結論は噂となって独り歩きすることがあり、人々は「公式な情報」と同僚から聞いた情報とを比較するようになります。

コミュニケーションの意図


送り手と受け手の考え方を含め、コミュニケーションに関する現象は、私たちに古典的なコミュニケーション方法を思い起こさせます。我々は、送り手が話したことが必ずしも意図した通りに受け手に伝わらないことから、チェンジマネジメントは単に一連のアクティビティやプロジェクトチームを揃えて、そのチームが実行すれば完結するわけではないと考えました。

効果的なチェンジマネジメントは、チェンジプラクティショナーが提供する慎重に検討されたガイダンスに沿って、正しいアクティビティを選択し、カスタマイズすることが必要です。チェンジマネジメントプラクティショナー、管理職マネージャー、スポンサーは、明確な情報伝達を行い、受け手の声に耳を傾け、変革の期間中に誤解が生じた場合は速やかに修正する必要があります。

変革のスポンサーとしての役割を果たすエグゼクティブやリーダーたちは、繰り返し、時には5回から7回もコミュニケーションをとる覚悟が必要です。スポンサーたちは、繰り返しを嫌うかも知れませんが、同じ話を複数のグループに対してしたつもりでも、それぞれのグループは1回しか話を聞いていないかも知れないのです。コミュニケーション上、スポンサーがよく犯す過ちは、コミュニケーション不足です。

チェンジプラクティショナーとしてのあなたの役割は、変革の間、一貫したアプローチで人々とコミュニケーションを取り続けるようスポンサーたちを教育することです。さらに、プライマリースポンサーは、変革の初期段階で支援することを表明し、変革の導入から定着までを見届ける必要があります。変革のキックオフを見届け、その後のことはプロジェクトチームに任せてしまうのは効果的ではありません。

最後に、コミュニケーション方法についてです。Prosciの調査によれば、対面かバーチャルであるかには関わらず、面と向かうコミュニケーションが最も効果を発揮します。ソーシャルメディアやメールのようなテクノロジーが進化した現代でも、実際にはそのコンテンツの一部しか伝わらないことを認識すべきです。コミュニケーションの多くは、声のトーンやボディランゲージを通じて行われます。そして、自分の言葉や思いが受け手に伝わり、信頼や信用を築くことができます。対面だろうとバーチャルだろうと、面と向かうコミュニケーションは難しいものですが、変革に関するコミュニケーションにおいては最善の方法であることがこれまでの実績で証明されています。

効果的なチェンジマネジメントのコミュニケーション


チェンジマネジメントのコミュニケーションは、変革に関するメッセージが人々に届き、移行のプロセスが始められるようになってはじめて効果的だと言えます。彼らは好ましい送り手からメッセージを受け取り、時間をかけてそれを理解し、最終的には自ら進む選択をする必要があります。その後、ようやく個人やグループは、プロジェクトチームやチェンジチームから「どんな変革なのか」や「いつ実施するのか」といった詳細なメッセージを受け取ることができます。この段階でようやく彼らはトレーニングを受け、詳細な情報を聞き、変革の成功に積極的に貢献する準備が整います。

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組織の変革プロジェクトが技術要件とマイルストーンを満たしていたとしても、目標と成果を実現できない可能性があります。これは何故でしょうか? 答えはチェンジマネジメントです。チェンジマネジメントを採用している組織は、予定どおりまたは予定より早く、予算内で、プロジェクトの目標を達成する可能性が高くなります。これは、データからも明確に示されています。

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著者:ティム・クリーシー (Tim Creasey)
ティム・クリーシーは、Prosciのチーフ・イノベーティブ・オフィサーで、世界的に認められたチェンジマネジメントのリーダーです。組織に成果をもたらす変革の人的側面の分野で土台となる最大の知識体系を築き上げました。