文化とチェンジマネジメント:避けて通れない課題Culture and Change Management: The Water We Swim In

by Prosci

文化は我々のチェンジマネジメントに大きな影響を与えます。Prosciのチェンジマネジメントにおけるベストプラクティス調査によると、回答者の88%が、チェンジマネジメントにおいて文化への理解が重要、または非常に重要だと答えています。チェンジプラクティショナーが文化を理解することで、チェンジマネジメントのアプローチを適切に調整し、文化特有の障壁を回避しながら、効果的なコミュニケーションプランを策定できます。

変革における文化理解の重要性


文化は態度、習慣、しきたり、知識などとして人々の間に形成され、社会で共有されるものです。多くの人にとって文化は抽象的で理解しにくいものです。この記事では、チェンジプラクティショナーや世界中の専門家の意見を交えて、文化とは何か、そしてそれがチェンジマネジメントにどのような影響を与えるかを解説していきます。

出典:チェンジマネジメントにおけるベストプラクティス 第12版

文化とチェンジマネジメント


「人にとっての文化は魚にとっての水」。この有名な言葉はおそらく作家デービッド・フォスター・ウォリスの物語から生まれたとされています。最も重要で当たり前のものは気づきにくく、説明しにくいということを表しています。魚が水の存在を知らずに一生を過ごすように、人は文化の中で生き、無意識のうちに影響を受けます。

チェンジプラクティショナーが変革を成功させるためには、影響を受ける人々の文化を理解し、それをアプローチに反映することが重要です。Prosciのチェンジマネジメントにおけるベストプラクティス調査では、文化を考慮に入れた際の課題や適応策についての重要なポイントが示されています。

まず、自分や他者の文化を観察する際、その影響に注目しましょう。例えば、仕事における人間関係のあり方も文化によって異なります。活動やトレーニングも文化的背景に合わせる必要があります。また、コミュニケーションも文化によってカスタマイズすべきです。

人類学者や異文化間のコミュニケーション専門家、比較文化研究者たちは、長年にわたり「文化の切り口」という視点から、様々な文化を研究してきました。そして、文化を説明するための用語やフレームワークを構築しました。我々の研究も、ホフステード、トロンペナールス、ハンプデン・ターナーといった著名な学者の功績、『Culture and Consequences』(1980年)、『Globe Study』(2004年)、『Riding the Waves of Culture』 (1997年)といった論文に基づいています。

文化の切り口と変革


文化の切り口とは、文化が内包する特徴的なスペクトルのことです。例えば、文化における自己主張とは、自分にとっての健全な状態のために、あるいは他者との望ましい力関係を実現するために主張する力のことであり、またその適切な程度を指します。

スペクトルの一方では、組織文化は弱い自己主張を特徴とし、人々は間接的で控えめなコミュニケーションを取り、上役に配慮し、エグゼクティブに忠実に従うことが期待されています。

そのスペクトルのもう一方では、自己主張が強く、対立的なコミュニケーションが取られます。コミュニケーションは直接的で、単刀直入であり、曖昧さがありません。エグゼクティブとの関係においても部下は主導権を握ることが期待されます。

これらは極端な例ですが、自分がそのスペクトルのどの位置にいるかを把握することで、課題や適応策がわかります。自己主張の弱い文化では、率直な意見が反感を買うことがあるのため、フィードバックを期待してもうまくいかないでしょう。曖昧なコミュニケーションが好まれる環境では、人々は経験をもとに最善の予測をする方法を身につけます。正確なフィードバックを受けて改善することは期待されなくなります。このような文化に対処するには、正直で率直なフィードバックを行い、重要な情報を提供することが大切です。

自己主張の強い文化では、極端な抵抗に直面することがあるかも知れません。変革プロジェクトに反対する人々は、変革をあからさまに拒否し、他の人にも同調を促すことがあります。フィードバックを過度に行うと、プロジェクトの進行が遅れる可能性もあります。このような反応が予測される場合は、抵抗の兆候を早期に検知し、それを軽減するための対策を講じることが重要です。

もちろん、同じ文化でも全員が同じとは限りませんが、その文化で妥当とされる態度や考え方を理解することはできます。

これらの文化の切り口を活用して文化の本質を見極めることが、チェンジマネジメントの効率を上げることにつながります。

文化とチェンジマネジメント業務


Prosciのチェンジマネジメントにおけるベストプラクティス調査では、以下の領域がチェンジマネジメントに大きな影響を与えることが分かっています。

  1. 自己主張(Assertiveness)
  2. 個人主義 対 集団主義(Individualism versus Collectivism)
  3. 感情表現の仕方 (Emotional Expressiveness)
  4. 権力の距離 (Power Distance)
  5. パフォーマンス志向 (Performance Orientation)
  6. 不確実性の回避(Uncertainty Avoidance)

回答者には、それぞれの地域において自分の組織がスペクトルのどの位置にあるかを判定してもらい、チェンジマネジメント業務において、支障となった文化的領域についても質問しました。詳細については、われわれのベストプラクティス調査をご覧ください。地域ごと、業界ごとのデータとスコアをリストアップされています。

ここでは、権力の距離 (Power Distance)を具体例に取り、文化がチェンジマネジメントにどのように影響するかを見てみましょう。組織内で地位が低い人々が組織の権力構造をどのように受け入れるかを考えます。

権力の距離水準が低い文化では、形式的な構造やヒエラルキーはあまり見られません。一般社員は上層部にも気軽に接触でき、自分の意見が聞き入れられると感じています。このような文化環境では、次のような課題や適応策が必要です。

課題


  • 上層部に直接コンタクトが取りやすいため、中間管理職に情報が伝わりにくく、何度も情報を伝える手間が生じる。
  • 組織内の全てのレベルの人が変革プロジェクトについて意見を述べる。
  • コミットメントやサポートに時間がかかり、生産性が低下する。

適応策


  • ミーティング回数、関与する活動、プロジェクトの方向性に合わせるための設計時間が増えた。
  • コミュニケーションルートを構築し、メッセージをカスタマイズし、社員のフィードバックを容易にした。
  • 重要なポストにステークホルダーを配置し、コミュニケーションのガイドラインを構築、役割を明確に規定して、チェンジマネジメントプランを向上させた。

文化の理解を実務に活かす3つの方法


識見を得ることは大事な一歩ですが、真の価値は変革の取り組みに文化理解を活用することにあります。以下にその方法を述べます。

1. 自分の業務環境を理解する


影響下にある人々が文化の6つのスペクトルのどこに位置するのかを考察します。異なる文化背景にある人々が同時に影響を受ける場合、それぞれの文化を理解し尊重することが重要です。違いも観察し、それぞれに応じたアプローチが出来るようにしましょう。

2. 自分の文化的視点を評価する


自分の文化を理解し、それが文化スペクトルのどこにあるのかを理解しましょう。そして、管理しようとする変革の文化背景との違いを理解しましょう。他の文化と比較することで、どのようにコミュニケーションを取り、対処すべきかがわかります。グローバルな変革の専門家として、そのような視点を持つことが重要であり、それが大きな違いを生むのです。

3. アプローチを適合する


自分の文化を考慮に入れてアプローチを調整し、文化に最も適した方法で変革についてコミュニケーションを取り、聴衆にとって最も効果のある活動を導入しましょう。

文化と変革の人的側面


文化は人々の変革を支える上で非常に重要です。文化をしっかり理解することで、より良い選択ができるようになります。影響を与えようとしている組織で働く上で、文化を無視することはできません。文化の影響力を考慮しながら、変革を進化させ、より良い成果を生み出し、人々に納得できる経験を提供しましょう。

【無料】チェンジマネジメントにおけるベストプラクティス

Prosciは、20年余りにわたり、チェンジマネジメントにおけるベストプラクティスを研究してきました。参加者からの回答をまとめると、変革の取り組みの結果に影響を及ぼすものとして7つの要素が挙がってきます。チェンジマネジメントに携わった個人からProsciに届いたこの報告こそが、チェンジマネジメントにおけるベストプラクティスなのです。

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