チェンジマネジメントで抵抗を未然に防ぐ意義The Case for Resistance Prevention in Change Management

by Lisa Kempton

変革を実施する際、多くの組織は抵抗に対応するために膨大な時間、労力、リソースを投入します。しかし、ひとたび変革の影響を受けるグループのメンバーへとその抵抗が波及すると、事態を収拾するのはとても困難になります。より賢明なアプローチは、変革の初期段階から準備態勢を整え、積極的に抵抗を抑える対策を講じることです。

変革に対する抵抗は成功の阻害要因となる


過去に経験した大規模な変革を思い出してください。どのように反応しましたか?どんな感情が湧きましたか?恐れ、無関心、士気の低下、疑念など、さまざまな反応があったと思います。これらは自然な反応ですが、抵抗が人々の態度に現れると、成功の大きな障害になります。

実際、Prosci®の25年間のチェンジマネジメント調査でも、変革に対する抵抗は変革の最大の阻害要因の一つであり、最新のチェンジマネジメントにおけるベストプラクティス調査でも第4位に挙げられています。

変革に対する抵抗の要因はさまざま


抵抗は自然な反応ですが、個人的要因や組織的要因により、反応が異なります。一般的な要因は以下の通りです:

  • 影響の大きさ — 個人の仕事に与える影響の大きさのことです。影響が大きければ混乱も大きくなりやすいです。そして、変革が大きな混乱をもたらすほど、強い抵抗が予想されます。
  • 個人的要因 — 財政事情、年齢、健康、移動制限、家庭の事情などが影響します。
  • 変革の量 — 既に多くの変革に直面している人々にとって、新たな変革を受け入れる余裕があるかどうかが重要です。変革の許容量の限界を超過していないか確認しましょう。
  • 信用と信頼 — 変革を推進するリーダーに対する信用と信頼があるかどうかです。信頼がなければ、変革の必要性を訴えても反論されるでしょう。
  • 変革の方向性 — 変革が組織と個人の価値基準に合致しているかどうかです。組織文化に沿わない変革は強い抵抗を引き起こします。
  • 組織の過去 — 過去の変革の成否も影響します。失敗を繰り返している組織では、新たな変革に対して懐疑的になるでしょう。

変革に対する抵抗の多くは防げる


チェンジリーダーとして、あなたはすでに多くの抵抗やそれに伴うストレスを経験しているでしょう。しかし、これらの多くの抵抗は未然に防ぐことができるのです。

Prosciのベンチマーク調査によると、回答者の41%が、社員の抵抗の半分以上は効果的なチェンジマネジメントを導入していれば防げたと報告しています。また、43%の回答者は、マネージャーの抵抗の半分は回避できたと言っています。

多くの人は、抵抗を行き詰まりややる気のなさの表れだと考えがちです。しかし、社員の抵抗の最大の原因は、変革の必要性を認知していないことにあります。これはProsciの調査結果でも明らかです。

幸いにも、社員や管理職マネージャーからの抵抗は効果的なチェンジマネジメントで大幅に抑えることができます。積極的に変革の準備態勢を整えることがポイントです。

抵抗管理の2つのアプローチ


変革の準備態勢を構築することは、Prosciの方法論の重要な柱です。抵抗管理には2つのアプローチがあります。

1. 抵抗を未然に防ぐ


抵抗を未然に防ぐことが最も重要です。効果的なチェンジマネジメントを適用することで、抵抗を予測し、それに備え、対処し、軽減することができます。

変革に対する抵抗を未然に防ぐためには、抵抗の兆候を早期に検出し、抵抗しそうなグループとその要因を特定し、対策を講じることが重要です。

Prosci 3フェーズプロセスでは、すべてのフェーズに抵抗の防止が組み込まれています。Phase1 – Prepare Approach(アプローチの準備)では、抵抗の可能性を予測し、評価し、積極的な対応策を打ちます。Phase2 – Manage Change(変革のマネジメント)では、ADKAR青写真とチェンジマネジメントプランに抵抗管理の活動を統合します。これには管理職マネージャーが部下を変革の期間中、支援する計画も含まれています。

2. 抵抗に対応する


抵抗が長引いた場合には、障害となっているあらゆる根本原因を明確にし、是正措置を取ることが重要です。

Phase2 – Manage Change(変革のマネジメント)では、ADKARの結果をもとに個人の進捗状況を評価し、変革の障害となっている要因に対処します。状況により、変革の障害の根本原因に対処するADKAR青写真とチェンジマネジメントプランに是正措置を施します。

Phase3 – Sustain Outcomes(成果の持続)では、引き続きADKARの成果を精査し、変革が個人レベルで定着していることを確認します。

抵抗を未然に防ぐことの10のベネフィット


もし、人が組織の変革で体験する恐れ、悲しみ、無関心、マイナス感情、逃避、士気低下、不信感、欠勤、失敗、摩擦などを防ぐことが出来るなら、是非そうするべきでしょう。変革の成功を最も後押しするのは、変革の準備態勢を整え、抵抗を未然に防ぐことです。

1. 時間と費用の節約


事前に準備を整えることで、抵抗が出現してから対応するよりもコストと労力を節約できます。また、変革の成功の可能性も高まります。

2. 抵抗の発生率の抑制


問題を予見し対処することで、抵抗の発生を減らせます。

3. 質の確保


最初から円滑に変革を進めることで、高品質で効率的な変革を実現できます。

4. 積極的な対処


抵抗を未然に防ぐことで、予見される問題や課題に組織が先回りして対処できます。

5. コミットメントの改善


早期に懸念材料を予測し対処することで、影響を受ける個人やグループから強いコミットメントを得られます。

6. 受け入れの加速


積極的なアプローチで組織内での変革の受け入れと活用を加速します。

7. 信頼関係の構築


問題を認識し対処することで、影響下にある個人やグループとの信頼関係を築くことができます。

8. 効率化と集中


抵抗を軽減、あるいは排除できれば、その分多くのリソースを効率的に活用でき、変革のプロセスで本来注力すべきところに焦点を当てることができます。

9. 職場の健全化


抵抗を予測して対処することで、プラス思考の職場環境を作り、ストレスを軽減できます。

10. 変革の成功率の改善


抵抗を未然に防ぐことで、組織が期限内に変革の目標に達成する可能性が高くなります。

変革に対する抵抗を未然に防ぎ解消するステップ


1,400人のウェビナー参加者に、変革期の抵抗管理において、現在、何に集中しているかについて質問しました。最も多かった回答は、60%が抵抗の予防、40%が抵抗への対応でした。さらに、本来であればどこに重点を置くべきだと感じているかを尋ねたところ、参加者の80%が抵抗の予防に集中すべきだと回答しました。

抵抗を未然に防ぎ、解消するための4つのステップを紹介します。

1. 考え方の転換の促進


効果的に抵抗を予測し対処するために、考え方の転換を促進します。あなたとあなたが支援すべき社員に関わる立場の人(スポンサーや管理職マネージャー)が自ら率先して考え方を転換して、模範となります。「どうやって抵抗を管理するか?」から「変革の準備態勢を構築するにはどうするか?」という考え方の転換です。

考え方の転換例

「全員が変革するべきだ」から 「全員が変革をする選択肢がある」へ
「人々は抵抗勢力だ」から 「人は抵抗を示している」へ
「抵抗は克服すべき、または解雇すべき、あるいは最小限に抑え込むべき悪い反応である」から 「抵抗は彼らの声に耳を傾け、理解し、応えていく良いチャンスである」へ

2. 変革の準備態勢の構築


Prosciの方法論は人々を積極的に準備させ、必要なものを与え、支援する体系的なアプローチです。効果的に導入するには、オープンで透明性のあるコミュニケーションを取り、人々を変革に関与させ、積極的に人々の声に耳を傾け、彼らからのフィードバックに応えていくことが重要です。

3. 変革に対する障害の予防


変革の影響を受けるグループの内、どのグループが変革に抵抗しそうか、その要因となる問題は何かを検出し、それらの課題を早期に軽減するか排除することで、抵抗を未然に防ぎます。

4. 変革の障害の解消


変革の障害となる根本原因を検出し、それら障害を解消する方法を探り、適切な是正措置を取ります。

変革に対する抵抗を理解する


抵抗の原因やその管理方法を正しく理解することで、大半の抵抗は未然に防げます。積極的に抵抗を防ぎ、軽減すれば、時間、費用、ストレスを減らし、変革がスムーズに進行します。最大の利点は、組織の変革成功率が向上することです。

【無料】変革の抵抗を管理する

変革には抵抗がつきもので、それはごく自然なことです。あなたは変革に対する抵抗をできるだけ減らしたいと考えるかもしれません。しかし問題は、変化に抵抗が生じるかどうかではなく、むしろ変化のプロセスを通じて従業員をどのようにサポートし、抵抗を管理して従業員と組織への影響を最小限に抑えるか、ということです。私たちは抵抗の期間やコスト、影響を管理することができます。変革プロセスの進行において社員をサポートし、抵抗を管理することで、社員への影響を軽減し、チェンジマネジメントプログラムの総合的な効果を高め、より良いプロジェクトの成果とベネフィットを実感できます。

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著者:リサ・ケンプトン (Lisa Kempton)
リサ・ケンプトンは、Prosciのグローバル・ラーニング・プロダクツの責任者であり、20年以上にわたり組織の変革を支援してきました。ティム・クリーシーと協働し、Prosciのチェンジスコアカードの開発にも携わっています。このツールは、チェンジマネジメントのプロセスを視覚化し、方向性を明確にし、信頼性を高めます。過去には、ヘルスケア、IT、公共事業の分野でシニアリーダー兼チェンジリーダーとして、大規模な戦略的改革の実施、チェンジマネジメント実務とそのためのインフラの整備、組織の効果的なソリューション開発等、多くの実績を上げています。