M&Aにおける文化統合を成功させる方法How To Improve Your M&A Cultural Integration for Success

by Tori Tipton

企業の合併・買収(M&A)において成功するためには、文化統合が重要な柱の一つとなります。しかし、M&Aの専門家たちが失敗の原因として最もよく挙げるのが、企業文化の不一致です。では、どのようにしてスムーズな文化統合を実現すれば良いのでしょうか?企業文化を効果的に管理している企業は、目標以上のシナジーを達成しています。文化統合を含め、成功したM&Aでは、両社の社員が同じビジョンと価値観を共有し、職場環境を刷新する方法を心得ています。

以下では、M&Aにおける組織文化統合のベストプラクティスについて説明します。

M&Aにおける文化統合とは何か?


M&Aにおける文化統合とは、両組織の文化を調和させることです。その目的は、統合後の新しい環境において、両社の良い文化が反映され、一体化して機能することです。

組織文化とは、共有する価値基準や信念に基づいて社員がどのように行動し、協力するかであり、その際の態度に表れるものです。Prosci®のアドバイザリーサービスのディレクター兼エンゲージメントリーダーのイアン・クロフト氏は、文化の変革期において信頼を得る方法について次のように説明しています。

「文化とは、リーダーが退室した時にわかるものです。文化はその組織の人々の行動や態度に表れます。文化の変革はまず人々の頭の中で起き、次に態度に表れるものです。」

M&Aにおいて文化が重要な理由


M&Aによって二つの組織が統合する際、必ず文化の違いという問題に直面します。地域差、就業の柔軟性、専門的な価値観の違い、権力構造の違いなどが合併時に克服すべき課題となります。

これらの違いは組織内で摩擦を引き起こし、合併の成否を左右する可能性があります。しかし、適切な統合管理を行えば、これらの問題を最小限に抑えることができます。両社の文化に配慮し、効果的な合併を妨げないように工夫することが重要です。

忘れてはならないのは、人々が変革にどう反応するかです。異なる文化が一つになろうとする際、チェンジリーダーの支援が重要であり、成功を左右する要素となります。

M&Aにおける文化統合のベストプラクティス


企業文化を統合する最善の方法は、M&Aのどの段階にあるかによって異なります。ここでは、M&A前、中、後の各段階におけるベストプラクティスを示し、文化統合の成功率を向上させる方法を紹介します。

主なポイント


  • M&A前:文化評価を行う — M&A計画の初期段階で文化評価を行い、文化に関する課題に対処します。
  • M&A中:進捗を絶えずモニターする — 文化統合の進捗をモニターし、社員が違和感なく適応しているかを確認します。
  • M&A後:統合を振り返る — 成功と失敗を振り返り、うまく行った点と改善すべき点を明確にし、次に活かします。

M&A前:文化評価を行う


文化統合を始める前に、各企業の文化に対する先入観を排除することが重要です。バイアスをなくすことで、M&Aにおける文化統合をスムーズに進め、双方にとってインクルーシブな環境を整えることができます。

まずは文化評価を行い、組織の文化的背景を分析し理解を深めましょう。これには以下のような方法があります。

  • 社員へのアンケートを実施する — 現行の文化の実情を精査し、正確に把握します。中心的な価値観は何か、摩擦を生じやすい違いは何か、組織の力関係はどうなっているかを確認します。
  • 業務のやり方を理解する — それぞれの企業の業務の進め方を理解します。管理業務や日常の実務はどう行われているか、意思決定はどのようにされているか、人々のやる気をどう引き出しているか、成功の定義は何かを把握します。

これらの情報は、二つの文化のギャップを埋めるのに役立ちます。新しい環境に馴染むために人々がどうすれば良いかがわかります。Prosciの方法論もこのプロセスに有効です。

Prosciの方法論、特に「チェンジインパクトの10の側面」モデルは、文化の違いを評価する際に非常に有用です。このアプローチでは、変革が個人にどのように影響するかを様々な視点から観察します。役割、ツール、考え方、職場環境などの領域を理解することで、変革の影響を正しく把握し、成功する変革管理を行うことができます。

Prosciの方法論は、人々が新たな組織の下で働くためにはどの程度、準備の時間が必要か、目安を提供してくれます。つまり、新しい組織に馴染むために要する時間や、新しい環境下で能力を発揮するまでに要する時間のことです。

M&A中:文化統合の進捗をモニターする


M&Aにおける文化統合は一定期間を要するプロセスです。合併の進行中は、文化統合の進捗を確認し、問題がないか注視しましょう。

  • 変革プランを活用する
    進捗状況をモニターし、必要に応じて統合戦略を調整します。
  • 統合チームを設置する
    双方の文化からメンバーを集めた機能横断的な統合チームを設置し、文化統合を監視します。
  • 抵抗や懸念に対処する
    変革期間中は人々の抵抗や懸念に対処し、統合の意義を説明します。

抵抗に直面した場合、「私にとって何の利益があるのか(WIIFM)?」という疑問に答えましょう。

変革をするかどうかは個人の判断になります。変革の影響を受ける人々の懸念に対処することで、コミュニケーションが成り立ち、変革に参加する意欲を高めることができます。

変革の意義について説得力ある説明をし、彼らの疑問に初期の段階で答えることで、人々の抵抗や懸念を軽減することができます。

M&A後:M&Aの文化統合を振り返る


M&Aの統合管理プロセスの終盤では、文化統合の成果を振り返り、成功と失敗を評価し、今後の改善につなげましょう。

Prosci3フェーズプロセスのPhase3 – Sustain Outcomes(成果の持続)は、成果を振り返る際に有効なフレームワークです。現在の状況と望ましい状況を対比し、業績の持続可能性や説明責任を明確にします。

このプロセスにおいては、終始、透明性が求められます。透明性を保つことは、新しい文化において信頼を築くために重要です。計画通りに進んでいない場合は、正直に伝えることでリーダーシップの信頼性を維持できます。

文化の変革を管理するにはチェンジマネジメントの力を活用しよう


M&Aにおける文化統合は、企業の合併において重要な鍵を握ります。成功すれば、新しい文化の中で社員が安心して働き、旧文化の大切な部分を継承しつつ、新しい文化に馴染むことができます。

文化の変革管理は絶えず進化するプロセスです。Prosciの方法論とツールを活用することで、文化統合を容易にし、あなたの能力を向上させることができます。

【無料】変革の影響を定義する

チェンジプラクティショナーが直面する最大の課題は、組織レベルの変革を、個人レベルの変革に落し込むことです。その際、個人レベルの変革プロセスを意識して、目を向け、注意深く観察し、記録するためのフレームワークを持つことが重要です。「チェンジインパクトの10の側面」のフレームワークを活用すると、組織レベルの変革が個人の仕事にどのような影響を与えるかを分析することができます。また、これらの側面を考慮することで、変革がグループによって異なる影響を及ぼすことを早い段階で確認することができます。

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著者:トーリー・ティップトン (Tori Tipton)
トーリー・ティップトンは、フォーチュン500の企業を対象に25年以上にわたり変革を推進してきた経験があります。人柄は信頼に足り、コーチングやトレーニング、プログラム推進の専門家として様々なアプローチを駆使することに優れています。HR分野でのキャリアを積んだ後、企業の組織改革や能力開発など大規模かつ機能横断的な変革プログラムを手掛けてきました。管理職として、またチェンジマネジメントの分野で豊富な経験を持ち、SAPの導入、ハイリスクな変革プログラムのリーダーのコーチング、新たなチェンジマネジメントおよびプロジェクトマネジメントオフィスの設立など、多くの実績があります。