チェンジエージェント:組織成長の推進者Change Agents: Catalysts for Organizational Growth
by Teresa Hauck
30%の組織のリーダーが、業界に関係なく、変化への抵抗が成功する変革の取り組みに対する障壁であると述べています。一方、組織のリーダーがチェンジエージェントの役割を担うことで、重要な変革プロジェクトを推進し、支援することができます。
公的機関も民間企業も、新しいテクノロジーの導入や市場の変化への対応など、難しい変革に直面しています。そして、組織の一人一人が変革プロジェクトを受け入れ、活用していくことが求められます。
Prosci®の調査によれば、チェンジエージェントのネットワークを活用している組織は、変革を成功させ目標を達成する確率が50%に達していますが、そのようなネットワークがない組織では達成率が41%にとどまります。
大規模な組織における変革を推進する上でチェンジエージェントの役割について、理論から実際の事例まで深く掘り下げて見ていきましょう。変革期における彼らの影響が理解できるケーススタディも取り上げます。
チェンジエージェントとは何か
チェンジエージェントは変革の推進者として、システム、プロセス、文化などの改善に力を発揮します。彼らは時にはチェンジインフルエンサー、チェンジチャンピオン、変革のためのエージェントなどと呼ばれることもあります。チェンジエージェントは技術的なサポートや人的のサポートを通じて、組織内の変革プロジェクトをリードします。
チェンジエージェントの形態は一様ではなく、組織の状況や変革の規模に応じて具体的な役割も異なります。
私たちは何十年にもわたり、顧客の複雑で大規模な変革に携わってきました。変革の影響を受ける人々を支援するため、早い段階でそれぞれの役割を明確にし、前進できるよう「~として私は、」という定型文を用いてサポートしてきました。
(役割)として、私は(具体的な行動)により受け入れと活用に貢献します。
例えば、ERPシステムの変革において、チェンジリーダーはITマネージャーに、以下のような役割定義を導き出す支援を行います。
私はITマネージャーとして、他部署からの技術的な疑問や懸念に答えることで、新しいERPシステムの受入れと活用に貢献します。
この「私は~として」というアプローチは、変革が個人に与える影響を言語化し、具体的なベネフィットを明確にし、抵抗の原因となる課題に直接対処するのに役立ちます。
大規模な組織では、チェンジエージェントネットワークを構築することで、組織のどのレベルでも、また異なる文化や地域においても効果的に支援が可能になります。
優れたチェンジエージェントに求められるスキル
チェンジエージェントは、ただの変革の推進者ではなく、ストラテジストであり、共感者であり、リーダーでもあります。組織の変革を効果的に推進するために必要な主要なスキルは以下の通りです。
- コミュニケーションスキルと影響力 — チェンジエージェントは変革を提唱し、人々に確実に理解してもらうために、優れた話し手であり聞き手である必要があります。影響力を発揮し、信頼を獲得することで、影響下にあるグループのコミットメント得て、新しい業務がスムーズに受け入れられるようにします。
- 共感力と感情知能 — 共感力があることで、変革によってもたらされる人々の不安を感じ取り、理解することができます。感情知能が高いことで、サポート体制の整った環境を提供し、抵抗の管理をしやすくし、人々のストレスを軽減できます。
- 戦略的発想と課題解決力 — チェンジエージェントは、戦略立案やリスク管理、難しい課題の解決に携わります。大局的な視点を持ち、意思決定の障害を予見し、変革プロジェクトが組織の方向性から逸脱しないようにします。
- 適応力とレジリエンス — 変革の道は平坦でないことが多く、予期せぬ出来事が発生します。有能なチェンジエージェントは、必要に応じて戦略を調整し、変革プロジェクトの停滞に対するレジリエンスを持っています。そのレジリエンスは他の模範となります。
- 協働的リーダーシップ — チェンジエージェントは、リーダーシップを発揮するとともに、組織内の他の人々との橋渡し役を担います。他者の力を引き出し、チームワークを促進し、変革プロジェクトに対するコンセンサスを築きます。
効果的なチェンジエージェントに必要なスキルを理解したところで、次にその役割とチェンジマネジメントのプロセスにおけるもう一つの重要な部分を見ていきましょう。
チェンジエージェント vs. チェンジプラクティショナー
チェンジプラクティショナーとチェンジエージェントの役割は異なりますが、相互に依存し合いながら協働して変革を推進します。
Prosci認定チェンジプラクティショナーはProsciの方法論のトレーニングを受けた者で、組織全体にチェンジマネジメントの戦略と計画を導入します。
チェンジプラクティショナーは、リーダーシップやマネジメント層のステークホルダーと協力してチェンジマネジメント戦略を実行します。その役割は多岐にわたり、変革の導入プロセス全般に以下のような責任を負います。
- 戦略の立案
- 開発計画の作成
- 高い次元で変革の推進
チェンジプラクティショナーは陰の立役者として、業務の調整や管理職の支援、チェンジマネジメントプランの開発、そしてチェンジマネジメント活動がプロジェクトプランと統合されるよう努めます。
一方、チェンジエージェントは、時にチェンジエージェントネットワークの一部となり、組織の変革を直接促進します。
チェンジエージェントは、マネージャー、上位監督者、または変革の影響を受ける社員に影響力を持つ同僚など、さまざまな役職の人々が担います。その役割は現場主義であり、人と直接関わりながら変革を推進します。典型的には:
- 変革の代弁者となる
- ベネフィットの説明をする
- 移行期に同僚をサポートする
両者とも変革の成功に不可欠ですが、チェンジエージェントはチェンジマネジメントチームと広範な社員との橋渡し役を担い、変革の成功に不可欠な存在です。
組織にチェンジエージェントが必要な理由
この10年、多くの予期せぬ事象により、組織は大規模な変革を迫られてきました。世界的なパンデミックによる急速なリモートワークへのシフトやAIの普及など、変革の推進力が不可欠となっています。しかし、多くの組織(70%)は、変革プロジェクトのROIやその他のベネフィットを十分に理解していません。
Prosciのチェンジマネジメントの5つの教義のうち3つ目では、「組織の成果は、個人の変革の集合結果である」と定義しています。チェンジエージェントの重要性はここからも明らかです。彼らは以下のような行動を通じてチームの各メンバーが変革を受け入れ、実行できるよう支援します。
- 変革に関する説明
- トレーニングの実施と導入支援
- チームや同僚に変革の模範提示
- 現場での変革管理
チェンジエージェントは、変革の成功は変革の人的側面をうまく管理できるかどうかにかかっているという考えに基づいています。
組織全体にチェンジエージェントネットワークを張り巡らせることで、新しいプロセスを迅速に導入する環境が整います。現代の組織は、新しいテクノロジーからマクロ経済の変動まで、さまざまな複雑な課題に直面しています。そのため、迅速かつ効果的に変革できる能力は競争力を維持するための重要な武器となります。
チェンジエージェントネットワークで変革を成功に導く
Prosciの方法論は、体系的で実証に基づくフレームワークを用いて、組織の変革の課題に対処します。その中心にあるのが、個人の移行を段階ごとに示したADKAR® Modelです。これは、Awareness(認知)、Desire(欲求)、Knowledge(知識)、Ability(能力)、Reinforcement(定着)の5つの要素で構成されています。
このProsci ADKAR Modelは、変革のプロセスで個人をサポートする際、チェンジエージェントの指針となるロードマップです。
Prosciの方法論は、変革チームが実用的なツールとアプローチを活用し、組織全体でADKAR Modelを導入することを可能にし、変革の定着に貢献します。
最後に、Prosciが支援したチェンジエージェントの成功例を紹介します。
Avangrid社のチェンジエージェントネットワーク構築例
アメリカの大手エネルギー企業であるAvangridは、変化するエネルギー事情にアジャイルで効果的に対応することを模索していました。アメリカ23州に7,000人以上の社員を抱え、当時は310億ドルの資産を保有していました。
2013年新設されたAvangridチェンジマネジメントオフィス(CMO)は、Prosciと協力して新しいシステムとプロセスへの移行を目指す変革プロジェクトを策定しました。この大規模な組織において、チェンジエージェントネットワークを設置する際の最重要事項は、すべてのチーム、部署、支店で変革の準備を統一することでした。導入プロセスでは、CMOとビジネスリーダーたちが以下の取り組みを行いました:
- 候補者に対して厳しい基準を設ける
- 技術的対応にも人的対応にも優れたリーダーを選出する
- Prosciのトレーニングプログラムを社員に実施する
- 各リーダーにProsciの資格を取得させる
取り組みの終盤までに、Avangridは各支店から20人の社員をProsciのチェンジマネジメント資格認定プログラムに派遣し、分散型のネットワークを構築しました。
チェンジエージェントネットワークに投資し、次の変革を今すぐ始めよう
チェンジエージェントの活動は、絶え間ない学びと適応の連続です。Prosciの方法論は確かな基盤を提供しますが、成功の鍵は、進化するビジネス環境に柔軟に対応することです。
組織の変革準備状況を確認し、チェンジエージェントとしてどのように成長し、変革を推進できるか考えましょう。変革をリードできる者こそが、将来を切り拓くのです。
【無料】チェンジマネジメントにおける役割
チェンジマネジメントの最終的な目的は社員のエンゲージメント力を高め、新たな仕事のやり方を採用するよう鼓舞することで、組織が結果や成果を出すための原動力となることです。変革の対象がプロセス、システム、職務内容、組織体制のいずれであれ(あるいはそのすべてであっても)、個々の社員が日々の行動を変え、新たなやり方で仕事をするようになったときに初めてプロジェクトは成功します。これこそがチェンジマネジメントの本質です。
著者:テレサ・ホーク (Teresa Hauck)
テレサ・ホークは、20年以上のキャリアを持つ組織変革の専門家です。複雑な変革やITシステム導入を主導してきました。十分な分析を重ねて戦略を練り、チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントの両方のベストプラクティスを活用し、ビジネスパフォーマンスの向上と組織の変革能力の強化を実現してきました。認定エグゼクティブコーチとして、変革期の関係構築や上層部へのコーチングに情熱を注いできました。テレサは、変革実践者のコミュニティの構築や企業間の知識共有を推進し、組織の準備状況の向上や持続的な成果を実現しました。彼女はジョージア大学で人事分野と組織開発の修士号を取得しています。