組織の変革力に投資する意義Why Invest in Enterprise Change Capability

by Scott McAllister

私はProsci®で、世界中のさまざまな業界の上級幹部と交流しています。パンデミック以前から、業務のあり方や生活全般が大きく変わることが予想されていたため、私たちは組織内での大規模な変革について意見を交換してきました。そして今が、組織の変革力を築き上げ、その投資から恩恵を受ける絶好の機会です。

絶え間ない変革、加速する変革


パンデミック前の数年間でも、多くの組織はますます加速する変革や大規模化する変革に取り組んでいました。「向こう3年間には、過去20年間で経験した数を上回る変革が待ち受けている」とか、「我々の未来は変革の取り組みに成功するかどうかにかかっている」といったコメントをよく耳にしました。そしてCOVID-19が世界を混乱に陥れると、そのようなやり取りは日常的なものとなり、より切実な問題となりました。

近年、素早く対応し、チェンジマネジメントの取り組みを強化する組織が増えています。しかし、私がリーダーたちに最も重要な変革に対して人的側面のアプローチをしていますか、と問うと、その反応は様々です。茫然とする人もいれば、わかりやすく説明してほしいという人もいます。組織内で堅固な変革力を確立することが不可欠であることは、未だに多くのリーダーたちにとって盲点となっています。

低い受け入れ率の高い代償


構築するだけではなく、活用することで初めて価値が生まれることは広く知られている事実です。それにもかかわらず、私は数百万ドルものプロジェクトが社員の受け入れを得ることなく無駄になっているケースを何件も見てきました。これは決して特異な例ではありません。通信会社、ヘルスケア企業、高等教育機関、公共事業、消費材メーカー、旅行会社、小売業など、どの業種でも同様のことが起こっています。

Prosciでは、顧客に対して「失敗から学ばなければ、本当の失敗になる」というメッセージを伝えています。長年、「どんどん失敗して、その経験から学ぶべきだ」という考え方をよく耳にしてきましたが、多くの大企業はこのような文化に賛同することがありません。失敗が起きた場合、多くの企業は誰の責任であったかを追求することに時間を費やし、影響を受ける社員たちが新しい変革を受け入れられるようサポートすることにはあまり時間をかけません。

最近では、組織の変革力を構築しなかった場合のリスクとその代償について、取締役たちの議論のトピックとなっているという明るい材料があります。私たちの顧客である数十億ドル規模の世界的企業では、取締役会が変革の受け入れが組織の最大のリスクであると結論づけているとのフィードバックをくれました。

増加するチェンジマネジメントの需要


組織は知らず知らずのうちにチェンジマネジメントへの対応の代償を払わされていると感じます。将来を見据えて少額の投資をすることは、後で立て直すために多額の投資をするよりもずっと賢明だと言えます。無数の変革の失敗を経て、多くの組織はチェンジマネジメントを「時間が許せば取り組もう」という姿勢から、「変革の価値を実感するために欠かせない手段」と捉えるようになっています。

新しい考え方を受け入れることは自然にできることではなく、意図的に取り組み、投資をしなければ期待通りの結果には辿り着けない、とリーダーたちが理解するようになったことが見えてきます。特に大規模なプロジェクトの予算計画では、チェンジマネジメント活動に専用の予算を含める必要があると、リーダーたちが主張しやすくなってきています。私が好きな言葉のひとつは、あるCFOが述べた次の言葉です。「私たちはチェンジマネジメントへの投資を考えるべきだ ― 少なくとも、不測の事態に対応するための予算と同じレベルで。」

変革力を向上させるためのヒント


変革力のある組織にするとは、具体的にどういうことを指すのでしょうか。組織の変革力の向上に取り組もうと尽力する方のために、いくつかヒントを提供します。

1. 組織の変革力を構築するにはスポンサーが必要


ここで述べるのは、一般的な組織のトップに立つリーダーたちについての話ではありません。実際に存在する、権威と影響力を兼ね備え、組織の変革のベネフィットをより享受すべきだと勇気を持って声を上げた人たちについての話です。適切なプライマリースポンサーを選ぶことは、組織の変革力を構築する過程に大きな影響を与えます。ボーズ社のエグゼクティブスポンサーのインタビューを通して、変革力構築の課題や可能性が見えてきます。

2. 最初に取り組むべき変革の選択は慎重に


多くの顧客は、体系的なチェンジマネジメントのアプローチの効果を証明するには、まず数年にわたる変革のプロジェクトから手をつけるべきだと主張します。これらの変革は魅力的な目標でありながら、非常に難しい問題が頻繁に発生します。もしチェンジマネジメントの成果が3年かかるとすれば、多くの組織はそのデータが出るころにはチェンジマネジメントの成果についての関心を失ってしまうことがあります。だからこそ、私は最初の100日で小さくても目に見える成果が出るようなプロジェクトを選択することを強く推奨します。デンマークの世界的な運輸会社が、2つの試験的なプロジェクトを皮切りに会社の変革力を構築した方法について、事例を読んでみましょう

3. 上級幹部はチェンジマネジメントのトレーニングを敬遠する


上級幹部にスポンサーの役割を担ってもらうことは非常に重要ですが、それを強制的なチェンジマネジメントのトレーニングとして押し付けると失敗してしまう可能性があります。上級幹部には、チェンジマネジメントトレーニングが必要だと伝えるのではなく、チェンジマネジメントをビジネス成果の起爆剤として捉えてもらうことがお勧めです。上級幹部に対して、トレーニングプログラムを受けさせるのではなく、既にオンラインまたは対面のミーティングを行っている機会を利用して、彼らが現在スポンサーしている既存のプロジェクトの成果を加速させるためのチェンジマネジメントスポンサー向けブリーフィングを行うことを推奨します。

4. あなたのリーダーシップとしての役割を明確に


調査によれば、変革の成功の最も大きな貢献者はスポンサーであるという結果が示されています。また、変革においてスポンサーは自分の役割を明確に理解する必要があることも調査結果で分かっています。しかし、変革の詳細について、スポンサーは自分の知っていることは他の人も知っているだろうという「知識の呪い」に囚われることがあります。彼らは変革について数週間、数か月にわたって話し合い、考え、計画し、議論した後でようやく組織全体に知らせます。しかし、数百、数千の影響を受ける社員たちが、一本の公表メールだけでスポンサーの意図を理解することができると誤解しがちです。

表1.1 – 時系列的に見た成功への貢献要素

出典: チェンジマネジメントにおけるベストプラクティス 第11版

変革の必要性について認知を高めること、変革を推進すること、そして積極的で目に見える支援を変革の全プロセスにわたって示すことは、いずれも、変革を受け入れ定着させるためにリーダーが果たせる重要な役割です。しかし、多くのケースでは、良いスポンサーシップについて十分な理解が得られていないことがあります。

組織の変革は続く


変革はもはや散発的な一過性の出来事ではなくなっています。むしろ、変革は継続的に常に起こっており、組織が成長し続けるためには変革力を向上させることが必要不可欠です。上級幹部は、競争の激しい市場で勝利するためには、競争相手よりも変革を成功させる能力を持つことが重要だと認識し始めています。

あなたの組織は堅固な変革力を構築するためにどのような方法を取っていますか?

変革力への投資が賢い選択である理由

変革力の構築とは、あなたの組織全体にチェンジマネジメントの考えを行き渡らせ、全ての人と全てのプロジェクトに組織のベネフィットを実現させることです。変革力を構築した組織は、チェンジマネジメントが核となるコンピテンシーであることを理解しており、ビジネスのやり方に重要な役割を果たしています。

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著者:スコット・マックアリスター (Scott McAllister)

スコット・マックアリスターは、個人と組織の変革に情熱を傾ける成果志向のリーダーです。3つの大陸での生活経験を活かし、スコットは顧客のパートナーとして成果志向のチェンジマネジメントソリューションを設計してきました。この15年間は、ヘルスケア、バイオテック、金融サービスなど幅広い業種で、顧客に対して戦略、オペレーショナルエクセレンス、イノベーションプラットフォームを備えた変革の導入を支援してきました。