組織のチェンジマネジメント能力構築のためのロードマップA Roadmap for Building an Organizational Change Management Capability

by Tim Creasey

今日求められている変革のスピードや変革の重要性を考えた時、競合他社に先んじて変革を行う能力は、組織にとって最も重要なコンピテンシーと言えます。組織は、この能力を構築することで、常にアジャイルで準備が整った状態を保つことができます。この能力構築の取り組みには、変革プロジェクトと同じように向き合う必要があります。それには、Prosci®のECMロードマップが役立つことでしょう。

ProsciのECMロードマップ


チェンジマネジメントの概念は、過去10年で大きく進化しました。以前は、コミュニケーションやトレーニングに焦点を当てたアプローチが一般的でしたが、現在ではより構造的で厳格なプロセスと具体的な目標を備えたアプローチへと変わっています。先進的な組織は、プロジェクトごとにチェンジマネジメントを適用するといったやり方から、チェンジマネジメントを組織全体に組み込み、本当の能力を高める方針にシフトしつつあります。

Prosciでは、このシフトを組織のチェンジマネジメント(ECM)と呼び、これを推進するリーダーたちを支援するための一連のツールを提供しています。この記事では、ProsciのECMロードマップについて紹介します。このロードマップは、組織のチェンジマネジメント能力を構築するための効果的な戦略やプランを策定するための構造的なプロセスです。

組織のチェンジマネジメント能力を構築する重要性に納得し、行動に移す段階に入ったら、構造的で目的のあるアプローチを構築する準備に入ります。もし組織内で、チェンジマネジメント能力構築の重要性に賛同を得ていない場合でも、組織のチェンジマネジメントのビジネスケースの事例からテンプレートなどを活用することで、その重要性とアプローチ方法をわかりやすく、論理的に提示することができます。

ECMロードマップの基盤


ECMロードマップの基盤は、シンプルですが、非常に重要です。組織のチェンジマネジメント能力を構築する業務自体が、実質的な変革プロジェクトであることを理解してください。チェンジマネジメントを組織全体に浸透させることは、組織自体の変革プロジェクトです。この視点を忘れず、進めていくことが非常に重要です。これは当たり前のことかもしれませんが、チェンジマネジメント能力を構築する際には、大きな違いをもたらす重要な視点であり基盤となります。

この考え方の転換には、シンプルながら強力な変革の枠組みとなるProsciのECMロードマップツール、が役に立つでしょう。新しい安全規範の導入から組織のERP導入に至るまで、あらゆる組織の変革は、以下の5つの要素に分解できます。

  • 現在の状態 ― 現在の仕事のやり方
  • 将来の状態 ― 変革の取り組み完了後の仕事のやり方
  • 移行期の状態 ― 現在の状態から将来の状態へどのように移行するか
  • 技術的側面 ― 将来の状態に到達するために必要なシステムやメカニズム
  • 人的側面 ― 将来の状態に到達するために必要な支援や賛同の獲得

組織のチェンジマネジメント能力を構築するプロジェクトに着手する際、このシンプルな変革の枠組みが重要な指針になります。この視点が欠けると、プラクティショナーは、より多くの人にチェンジマネジメントのトレーニングを施したり、プロジェクトがある度にその場しのぎの対応をしたりと、無駄に奔走することになります。このようなアプローチでは、ある程度の進展はあるかも知れませんが、重要な思考のシフトが出来ていないことを意味します。変革プロジェクトのごとく取り組まなければ、本当の組織のチェンジマネジメント能力を構築することは出来ません。

構造と活動


ProsciのECMロードマップは、変革の枠組みに基づいて作られています。各ツールは、以下のように、現在、移行期、将来の状態のモデルを反映したものになっています。

1. プロジェクトECM概要


活動:

  • 変革プロジェクトと同じように、組織のチェンジマネジメント能力の構築に取り組む:プロジェクトECM
  • 「チェンジマネジメント」と「組織のチェンジマネジメント」の違いを明確にする
  • プロジェクトECMの基盤作りに着手する。プロジェクトの定義、説明、規模を明確にする
  • チェンジマネジメントの重要性、組織のチェンジマネジメントの重要性を提唱する

ツール:

  • テンプレート「プロジェクトECMのプロジェクトプラン」
  • テンプレート「自分の組織にECMの意義を関連付ける」
  • テンプレート「なぜプロジェクトECMなのか」
  • チェックリスト「プロジェクトECMロードマップ」

2. 現在の状態の評価


活動:

ツール:

  • Prosci Change Management Maturity Model™(Prosciチェンジマネジメント成熟度モデル)監査と白書
  • プロジェクトECMの現在の状態の状況分析評価
  • ワークシート「変革はどのように起きるか」
  • ワークシート「助長または阻害」
  • ワークシート「人的側面分析」

3. 将来の状態を定義


活動:

  • 「将来の姿」の演習を完成させる
  • 成熟度の目標レベルを設定する
  • ECM展望を文書化する
  • 技術的側面を定義し、将来の状態を明確にする
  • 人的側面を定義し、将来の状態を明確にする
  • プロジェクトECM目標を文書化する
  • 将来の状態の評価指標を策定する

ツール:

  • ワークシート「将来の姿」
  • テンプレート「成熟度モデルの目標」
  • テンプレート「プロジェクトECMの将来の状態評価基準と指標」

4. 移行期の設計 ― 技術的側面


活動:

  • ギャップを検出する
  • 出発点を明確にする
  • 現在の展望を客観的に評価する
  • リーダーシップの戦略を計画する
  • スキル構築の戦略を計画する
  • 構造形成の戦略を計画する
  • プロセス形成の戦略を計画する
  • 総合的なフェーズプランを策定する

ツール:

  • プロジェクトECMのギャップ評価
  • ECM戦略マップ
  • テンプレート「ECM戦略マップの出発点」
  • ECM戦略マッププラン

5. 移行期の設計 ― 人的側面


活動:

ツール:

  • ECMモニタリングツールのためのOCM
  • ワークシート「聞き手を明確にする」
  • プロジェクトECMのADKAR分析

6. プロジェクトECMを変革プロジェクトとして管理


活動:

  • プロジェクトECMに対してProsciのPCTアセスメントを実施する
  • 将来のPCTアセスメントのプランを策定する
  • プロジェクトのツールを活用する(ステートメントオブワークス、チャーター、プロジェクトプラン、ビジネスケースなど)
  • ベストプラクティスを活用する

ツール:

  • プロジェクトECMのPCTアセスメント
  • テンプレート「PCTアクションアイテム」
  • PCTの進捗評価
  • ECMのベストプラクティスチェックリスト

あなたの組織にECMを


ECMに取り組む際に重要なのは、チェンジマネジメント能力の構築自体を一つの変革プロジェクトとして捉えるということです。本当の組織のチェンジマネジメント能力を構築するには、意識的なアプローチに加え、ロードマップ、プロセス、ツールを活用することが欠かせません。

プロジェクトECMで組織の変革力を構築する

組織全体でチェンジマネジメント能力と実践力を構築するには、意識的で包括的な取り組みが必要です。絶えず変化するこの世界、そして予想される変革のスピードを考えた時、これ以上に重要な能力はありません。この構造と考え方を活用して、あなたの組織のチェンジマネジメント能力を構築し、組織のアジリティを向上させましょう。

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著者:ティム・クリーシー (Tim Creasey)
ティム・クリーシーは、Prosciのチーフ・イノベーティブ・オフィサーで、世界的に認められたチェンジマネジメントのリーダーです。組織に成果をもたらす変革の人的側面の分野で土台となる最大の知識体系を築き上げました。