人が変革に抵抗する理由Understanding Why People Resist Change
by Tim Creasey
なぜ人は変革に抵抗するのでしょうか。抵抗は変革に対する自然な反応ですが、感情的な理由だけではありません。私たちチェンジマネジメントプラクティショナーは、抵抗の根本原因を理解する必要があります。そうすることで、個々のメンバーが移行期に前進するのをサポートし、重要な変革を成功させるのに役立つでしょう。
抵抗の傾向
Prosci®のチェンジマネジメントにおけるベストプラクティスの調査研究では、組織内のどのグループが最も抵抗を示したかについて報告しています。その結果、中間管理職が最も抵抗を示すグループであり、次いで現場社員が続きます。これは過去のデータとも一致しています。
社員が変革に抵抗する理由
社員が変革に抵抗する理由は様々ですが、Prosciの調査によれば、主に以下の5つの理由が挙げられます。
- 変革理由についての認知の不足
- 職務役割の変更
- 未知なるものへの恐れ
- リーダーからのサポートや信頼の欠如
- 変革に関する意思決定からの疎外
認知の不足
社員が変革に抵抗する最大の理由は、変革の目的や理由についての認知が不足していることです。これは、組織側が変革の詳細やビジネス上の理由を適切に伝えていないためです。また、変革が成功するために社員がどのような役割を担うのか、が明確に示されていないこともあります。社員が、「私にとってのメリットは何か?」という疑問に答えを見つけられない場合、抵抗が生じることがあります。
役割の変更
社員は、自分の仕事に変更が加えられると抵抗感を示すことがあります。業務量の増加、職務内容の変更、新しい姿勢や態度を求められた場合などが該当します。担当業務が変わり、新しいシステムやテクノロジーの習得を求められると、社員は学ぶことへの抵抗を感じることがよくあります。また、変革を受け入れる時間的余裕がないと感じたり、動機付けが不十分だったり、自分の判断権の制約を懸念することもあります。また、社員が権限、地位、アイデンティティを喪失する可能性がある場合、抵抗が生じます。
未知なるものへの恐れ
恐れは社員が変革に抵抗する主要な要因の一つです。特に、仕事を失う可能性や報酬面での悪化への恐れは大きなものとなります。将来の不確実性が増し、以前の変革の失敗からくる組織の未来に対する不安も影響します。新しいテクノロジーが導入されることによって、自分のパフォーマンスが落ちるのではないか、組織文化が変わってしまうのではないか、より厳しい査定基準や評価が導入されるのではないかなど懸念材料が増えます。長期間組織に在籍している社員ほど組織に馴染んでおり、古いやり方に慣れているために、変化に対する抵抗が強くなる傾向があります。
リーダーからのサポートや信頼の欠如
人が変革に対して抵抗するのは自然なことですが、管理職マネージャーやリーダーたちの影響は小さくありません。しばしば、マネージャー自身が変革に対して強い抵抗感を示し、変革へのサポートにも消極的になります。このような不適切なロールモデルは、変革に対する社員の態度や支援に直接的な影響を与えます。過去にエグゼクティブのリーダーシップが信頼できない、移行期に適切なサポートを得られなかったといったマイナスの経験がある場合も、社員が抵抗する原因になります。
変革に関する意思決定からの疎外
変革に関する意思決定やソリューション設計に参加できない社員は、変革に抵抗する傾向があります。
現場社員は、声を聞いてもらえない、脅威にさらされている、だまされている、蚊帳の外に置かれている、変革の犠牲にされている、と受け止めやすいものです。社員は、自分たちも準備に参加し、必要なスキルを身につけ、社員を支援するプロセスに参加したいと望んでおり、変革に貢献したいと思っているのです。計画段階での透明性とコミュニケーションは、このような抵抗を軽減するために非常に重要です。
マネージャーが変革に抵抗する理由
Prosciの調査によれば、マネージャーが変革に抵抗する主な理由は以下の5つです。
- 組織文化の問題
- 変革に関する認知と知識の不足
- チェンジマネジメントに対するサポートとコミットメントの欠如
- 変革プロジェクトの目標と個人のインセンティブとの不一致
- 変革を管理するための自分自身の能力に対する自信のなさ
組織文化
調査の回答者たちは、組織文化が最大の抵抗の原因であると答えました。具体的には、リスク回避の文化、過去の変革に対する苦い経験、組織内の派閥形成、部署内での信頼の欠如などが問題とされました。リーダーや上司のサポートが得られない文化では、マネージャーたちは無力感を味わいます。
変革に関する認知と知識の不足
調査によれば、マネージャーたちは、変革には何が伴うのか、変革の理由やROI(投資利益率)、「自分にとってのメリットは何か?」についての知識が不足しているため、変革に対して抵抗することがあります。
サポートとコミットメントの欠如
抵抗を示すマネージャーたちは、変革を否定的に受け止めることがあります。彼らは現状に満足していたり、変革が組織の目標に合致していないと感じていたりします。変革に伴う新たな責務や義務に嫌悪感を抱くこともあります。自身の権威や地位の喪失を恐れたり、より透明性を高めることや説明責任を果たすことを嫌がることもあります。
変革プロジェクトの目標と個人のインセンティブとの不一致
調査によれば、変革のプロジェクトマネジメント上の問題がマネージャーたちの抵抗を招くとされています。変革のペース、指標の欠如、変革の目標と個人のインセンティブとの不一致、コストとのバランス、ボーナスの基準などが含まれます。回答者たちは、これらの問題やインセンティブの欠如が、マネージャーたちが変革に肯定的な態度を示さない要因であると認識しています。
変革の人的側面を管理するための自分自身の能力に対する自信のなさ
マネージャーの抵抗は、変革を率いる能力の不足からも生じることがあります。変革を効果的に管理し、部下に難しいメッセージを伝えるスキルがない場合、抵抗を示すことがあります。
抵抗の兆候
組織内で抵抗が発生した場合、それをどのように検出できるでしょうか。変革に対する抵抗管理に関するProsciの調査によれば、回答者たちは、以下のような兆候を報告しています。
- 変革への参加を避ける — 変革が終わるまで待ったり、変革を回避しようとする
- 公然と不満を表明する ― 不満や批判、敵意、攻撃的な態度、怒り、不平、口実、モラルの低下、批判的なコメントなどを公然と表明する
- 怠ける ― ミーティングやプロジェクトに参加しない、トレーニングを怠ける、仕事そのものを怠ける
- 古い方法に戻る ― 新しい仕事のやり方を無視し、回避する方法を探す
- 生産性の低下 ― 締切に遅れたり、仕事の遅れが増えたり、アウトプットが減少したりする
抵抗管理の重要性
Prosciの研究から明らかになったのは、抵抗が変革を成功に導く上で最も大きな障壁であるということです。抵抗を過小評価したり無視したりするのは一般的な誤りであり、かえって抵抗を増幅させる結果となります。同様に、変革の影響を受ける人たちの懸念を理解せず、彼らの声に耳を傾けないと、根本原因を取り除くのに画一的なアプローチしかできません。その結果、計画段階から失敗することになります。組織の変革を管理する際に、チェンジプラクティショナーは調査結果を参考に、初めから正しくチェンジマネジメントを適用する、変革に抵抗はつきものだと認識する、決められたアプローチを採用する、抵抗の根本原因を探る、正しく抵抗管理者を関与させる、の5つの要点を考慮することが推奨されます。
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変革には抵抗がつきもので、それはごく自然なことです。あなたは変革に対する抵抗をできるだけ減らしたいと考えるかもしれません。しかし問題は、変化に抵抗が生じるかどうかではなく、むしろ変化のプロセスを通じて従業員をどのようにサポートし、抵抗を管理して従業員と組織への影響を最小限に抑えるか、ということです。
著者:ティム・クリーシー (Tim Creasey)
ティム・クリーシーは、Prosciのチーフ・イノベーティブ・オフィサーで、世界的に認められたチェンジマネジメントのリーダーです。組織に成果をもたらす変革の人的側面の分野で土台となる最大の知識体系を築き上げました。