プロジェクトがつまずく理由と
チェンジマネジメントでできること
プロジェクトの遅延や手戻りは、作業の遅れだけでなく意思決定の停滞や関係者の認識のずれからも生じます。つまずく8つの要因と、PMが今のプロジェクトで確認できるポイントを紹介します。
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要件を固め、担当者を決め、スケジュールも合意した。それでも、プロジェクトが進むにつれて意思決定が遅れ、ユーザーテストで新たな要望が相次ぐ。計画を調整しても同じ問題が繰り返され、予定どおりの稼働が難しくなることがあります。
こうしたとき、遅れている作業を確認するだけでは、原因にたどり着けないことがあります。ステークホルダー間の認識はそろっているか、必要な判断は滞っていないか。その背景を見極めることが重要です。チェンジマネジメントは、変革の影響を受ける人々が変化を理解し、新しい働き方を受け入れ、実践できるよう体系的に支援する取り組みです。プロジェクトの進行を支えるだけでなく、導入した仕組みが現場で使われ、期待した成果につながることを目指します。
チェンジマネジメントの基本的な考え方は、「チェンジマネジメントとは」で詳しく解説しています。
この記事では、プロジェクトがつまずく代表的な8つの要因と、プロジェクトマネージャーが現在のプロジェクトで確認できるポイントを紹介します。
プロジェクトが失敗・停滞する8つの要因とは?
プロジェクトの問題は、一つの原因だけで生じるとは限りません。代表的な要因として、次の8つが挙げられます。これらは互いに影響し合うことも少なくありません。
- 目標が曖昧である:関係者が異なる成果を期待し、優先順位を判断しにくくなります。
- 追加要件でスコープが際限なく広がる:追加作業の影響を評価しないまま、コミットメントだけが増えていきます。
- 計画が不十分で、日程に無理がある:計画上は可能でも、計画を実行するための条件が整っていなければ遅延につながります。
- 必要な人員や時間が不足している:担当者は決まっていても、その人が作業に充てる時間が確保されていません。
- リーダー層の関与が不十分である:必要な判断が進まず、障害を解消する権限も働きません。
- コミュニケーションが機能していない:状況や役割の理解にずれが生じます。
- ステークホルダーの参画が不足している:現場の懸念が把握されないまま進み、問題が表面化してから対応することになります。
- 状況の変化に柔軟に対応できない:問題が明らかになっても、計画や進め方を見直せません。
遅延の原因はどこにある?意思決定と業務の実態を確認する
例えば、複数の部門で共通の承認プロセスを導入するプロジェクトを考えてみましょう。各部門は導入に賛成していますが、担当者が変更内容を承認するには、部門内での相談や上司の判断が必要です。こうした社内調整には時間がかかります。ところが、計画にはプロジェクト会議の日程だけがあり、その前後の調整時間が含まれていません。
この場合、回答を催促するだけでは解決しません。事前の調整は、合意をつくるために必要な工程です。誰の合意が必要で、どのような手順で判断するのかを確認し、その時間を計画に組み込むことで、日程の見通しが現実に近づきます。
また、部門の担当者が通常業務を抱えたまま、兼務でプロジェクトに参加していることもあります。この場合、レビューやテストに十分な時間を確保できないことがあります。担当者が決まっていることと、必要な時間が確保されていることは別です。まず管理職と業務の優先順位を調整し、解決が難しい場合はスポンサーの判断を仰ぎます。
チェンジマネジメントは目標達成とどう関係するのか
Prosci🄬(プロサイ)の調査では、チェンジマネジメントの有効性を4段階で評価した回答者のうち、プロジェクト目標を達成、または上回ったと報告した割合は、チェンジマネジメントの取り組み度合が「低い」場合で13%、「普通」で39%、「高い」場合で73%、「非常に高い」場合で88%でした。評価が上がるにつれて、割合も段階的に高くなっています。「非常に高い」場合と「低い」場合を比べると、約7倍の差があります。

この結果は、チェンジマネジメントを実施すれば必ず成功するという意味ではありません。調査は回答者自身の評価に基づいており、示されているのは関連であって、因果関係ではありません。ただし、プロジェクトの準備状況を確認する際に、成果物や作業の進捗に加えて、関係者が新しい業務に対応できる状態かを確認する意義を示しています。
例えば、新しい手順の説明会が終わっていても、社員が実際の業務で使えるとは限りません。具体的な業務場面で試してもらうことで、説明だけでは分からなかった課題や、定着に向けた課題を早い段階で把握しやすくなります。
スポンサーの関与を、具体的な判断にどうつなげるか
ここでいうスポンサーとは、変革の成果に責任を持つ経営層や、部門・事業を率いるリーダーを指します。変革の理由と方向性を示し、必要な判断や部門間の協力を促しながら、継続的に変革をリードする役割を担います。
Prosciの調査では、スポンサーの有効性についても、目標達成との関係が示されています。スポンサーが「極めて効果的」と評価された回答では79%が目標を達成、または上回ったのに対し、「極めて効果的でない」と評価された回答では27%でした。その間の評価でも、効果的と評価されるほど達成の割合は高くなっています。

日本アタウェイの「チェンジマネジメント国内実態調査(2026年版)」でも、変革の定着に関わる要素として、経営層や現場マネージャーを含むマネジメント層の継続的な関与が挙げられています。調査はProsciチェンジマネジメント資格認定プログラム受講者を対象に実施し、59名が回答しました。日本企業全体を統計的に代表するものではありませんが、チェンジマネジメントを学び実践している層の傾向を示しています。
プロジェクトマネージャーにとって重要なのは、スポンサーに何を判断してほしいのかを具体的に伝えることです。「部門の協力が得られない」という報告だけでは、必要な対応が見えにくくなります。
そこで、報告ではなく、判断材料を添えて意思決定を依頼します。例えば、テスト担当者の業務時間を確保するのか、部門間で異なる承認ルールを統一するのか。それぞれの選択肢と、対応しなかった場合の納期への影響を整理して示せば、スポンサーは判断しやすくなります。プロジェクトマネージャーとしての推奨案も添えると、さらに判断しやすくなります。
プロジェクトマネージャーが調整できることと、事業側の権限が必要なことを分けて考えることが大切です。
失敗を防ぐには?普段のプロジェクト運営に組み込む
問題を防ぐには、成功の基準を関係者と共有し、実行可能な計画を立てるとともに、進行中も対話と参画を続けることが必要です。新たな情報に応じて計画を見直し、人々が新しい働き方に対応するための準備も進めます。
まずは、現在のプロジェクトで近づいているマイルストーンを一つ取り上げ、その前提を確認してみてください。
- 承認が必要な場合:誰の意思決定が残っているか、事前の調整は済んでいるか。
- 新しい手順を使う場合:実際の業務を遂行できるか。
- 確認した課題:誰がいつまでに対応するかを合意します。
すべての活動をプロジェクトマネージャー自身が担う必要はありません。管理職やスポンサーとの役割分担を明確にすることで、組織としてプロジェクトを支えやすくなります。
自分のプロジェクトで実践する力を身につける
「Prosciチェンジマネジメント資格認定プログラム」では、3日間を通じて、受講者が自分自身のプロジェクトに方法論を適用し、現場に持ち帰って使えるチェンジマネジメントのプランを作成します。日々直面している課題に、体系的な方法で取り組むための実践型プログラムです。
プロジェクトマネジメントとチェンジマネジメントをどのように組み合わせるか、さらに詳しく知りたい方は、関連記事「プロジェクトマネジメントとチェンジマネジメント」もご覧ください。
※本記事は、Prosciの記事を参考に、日本のプロジェクト現場を想定した解説と例を加えて構成しています。
参考リンク:Why Projects Fail: Common Causes and How to Prevent Project Failure(英語)

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