株式会社富士通ラーニングメディア石橋様と日本アタウェイ株式会社和田によるチェンジマネジメントに関する対談の様子

本資料は、株式会社富士通ラーニングメディア様主催セミナーにて実施された対談セッション(質疑応答)の内容を、簡潔に再編集したものです。

変革が当たり前となった今、なぜ多くのプロジェクトが人の側面でつまずくのか。その問いに対し、Prosciのチェンジマネジメントの考え方を軸に、実践的な視点を対話形式でお届けします。

この資料で分かること

  • チェンジマネジメントにおける「変革」の本質
  • 他の変革理論と比較したProsciの特徴
  • 人の行動変化を成果につなげるための考え方
  • 日本企業での実践におけるリアルな示唆

チェンジマネジメントの「Change」とは何か

石橋宏路様(以下、石橋)チェンジマネジメントの「Change」は、日本語では「変革」と理解してよいのでしょうか?

和田円香 (以下、和田):ここでいうChangeは、四季の移ろいのように自然に起こる変化ではなく、明確な目的をもって人が意図的に起こす活動を指します。そのため、ここでは「変革」という言葉を用いました。重要なのは、仕組みを変えることではなく、人がその変革を理解し、受け入れ、行動を変えられるかどうかです。

コッターの変革理論とProsciはどう違うのか

石橋:ジョン・コッターの変革理論(変革の8段階プロセス)との違いはどこにありますか?

和田:ジョン・コッターの変革理論は、変革を推進するリーダーが「何をすべきか」を端的に整理した、比較的トップダウン型のアプローチであると考えています。変革の全体像を理解するうえでは非常に有効であり、現在も多くの企業で参照されています。

構造的な違いを一言で申し上げると、コッターが主に組織・リーダーの視点から「何をすべきか」を示すモデルであるのに対し、Prosciは組織レベルの変革プロセスである3フェーズプロセスと、個人レベルの変革プロセスであるADKAR Model®(以降ADKARモデルと呼称)を組み合わせ、「組織」と「個人」の両輪で変革を捉えている点が本質的な違いだと考えます。

その特長を、もう少し具体的に3つに分けてご説明します。

第一に、変革を個人の視点から捉えている点です。「人の変革は既製服のように1つのやり方では済まない」という考え方に立ち、立場や経験によって受け止め方が異なることを前提に、まず個人がどのように変化を受け入れていくかのプロセスに着目します。そのうえで、対象となる個人だけでなく、経営層・マネジメント、上長、プロジェクトマネージャーといった様々な役割が、個人の受容をどう後押しできるかについても整理・体系化しており、個人と組織の両面からアプローチできる点が特長です。

第二に、そうした個人の変化を支援するために、ADKARモデルをはじめ、「何を・いつ・どのように行えばよいか」が分かる具体的なフレームワークやガイド、ツールまで体系的に提供している点です。概念論にとどまらず、現場で実行可能なレベルまで落とし込まれているため、初心者でも取り組みの第一歩が取りやすくなると考えます。

第三に、30年以上にわたりチェンジマネジメントに特化した研究と実践を重ね、社会環境や働き方の変化を取り込みながら方法論そのものを継続的にアップデートしている点です。その結果、高い再現性が担保されます。

ADKAR® Modelと3フェーズプロセスとは何か

石橋:ProsciのADKARモデルと3フェーズプロセスについて教えてください。

和田:Prosciでは、変革において変わるのは組織ではなく、1人1人の人だと考えます。ADKARモデルは、個人が変化を受け入れていく過程を5つの要素で示したものです。まず変革の過程の中で、人が今どの段階にいるのかを理解することが重要です。

3フェーズプロセスは、そうした一人ひとりの移行を支援・後押ししながら、変革を目的地まで導いていく考え方です。まず何をもって成功とするかを最初にしっかりと定義したうえで、組織やプロジェクトが実践できる具体的なアクションを体系立てて示し、ソリューション導入後にはその成果が当初の目標に到達・超過しているかを見届けるところまでを、一つの方法論としてまとめています。

ここで注意したいのは、ADKARモデルも3フェーズプロセスも、あくまで手段だという点です。タスクをこなすこと自体が目的ではなく、また人がうまく移行すること自体もゴールではありません。それらを通じて、当初定義した変革の目標を達成・超過し、変革の成功率を高めることこそが本来の目的です。この目的と手段を取り違えてはいけないと考えています。

どのような立場の人が研修を受けているか

石橋:研修にはどのような立場の方が参加されていますか?

和田:課長層を中心に、R&D、マーケティング、営業、エンジニア、製造など、さまざまな部門のリーダーの方にご参加いただいています。業務革新推進チームリーダーやAI/DX/ERP導入リーダーなど、大きな変革プロジェクトの推進を任された機能の方も多いです。また着目すべきところとしては、変革を組織に浸透させる観点から、経営層、シニアリーダーの方にも受講いただくケースが増えています。

方法論の導入でどのようなインパクトがあったか

石橋:和田さんは、Prosciを通じて多くの変革プロジェクトに関わってこられたと思いますが、方法論を取り入れることで特にインパクトを感じた場面を教えてください。

和田:大きく2つあります。

一つは、個人の変化がその場で見える瞬間です。体系的にチェンジマネジメントを実践すると、ADKARサーベイを通じて「説明が分かりやすかった」「トップの発信で腹落ちした」「今、自分がどの段階にいて、何をすればよいかが分かる」といった声が返ってきます。人が迷わず前に進めている、という手応えを直接確認できるのは大きいですね。

もう一つは、一人ひとりの努力がビジネスの結果に結びつき、可視化された瞬間です。チェンジマネジメントは「変革における人的側面管理」の手法なので、プロジェクトの初期段階で組織が得るべき成果・ベネフィットを具体化し、最終的にリーダー/プロジェクトマネージャーとともにその到達状況を測定します。ソリューションが無事稼働したかどうかだけでなく、その先のROIまで意識して語れるようになったとき、組織へのインパクトは非常に大きくなります。この視点は、日本の変革プロジェクトにはまだ十分に浸透していないと感じています。

まとめ:人と環境を整えることが成否を分ける

変革を成功させるためには、優れた仕組みやシステムだけでなく、それを使いこなし、主体的に行動する人と環境を整えることが不可欠です。

チェンジマネジメントは、人の側面からプロジェクトを支え、成果創出の確度を高めるための重要なアプローチです。