チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントの比較Change Management and Project Management: A Side-by-Side Comparison

by Tim Creasey

変革プロジェクトを実行するには、チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントの両側面のアプローチが必要です。変革を効果的に実施し、計画通りの成果を達成するには、構造化されたアプローチが欠かせません。さらに、チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントは協力して行う必要があります。これらの要素が結びついた時、統合的な価値が生まれ、戦略的な一致が見られ、人的側面と技術的側面の両面で価値が共有されます。

プロジェクトマネージャーのためのチェンジマネジメント


あなたの役割によって、チェンジマネジメントの意味は変わります。プロジェクトマネージャーは、チェンジマネジメントを、変革のためのリソース、プロセス、スタッフを管理することだと捉えがちです。あるいは、変革プロジェクトに合わせて変革を調整することだと捉えるプロジェクトマネージャーもいます。Prosci®によれば、チェンジマネジメントとは、構造化されたアプローチとツールを用いて変革の人的側面を管理し、望ましい成果を達成することを意味します。

また、変革プロジェクトのソリューション設計や開発には、アジャイル型など様々な反復的なアプローチが使われるようになってきました。これは、特に技術的側面において効果的です。状況に応じて、段階的な変革アプローチ、反復的な変革アプローチ、またはそのハイブリッド型を用いて、ソリューションの設計、開発、展開をするわけですが、それに応じてチェンジマネジメントを調整できます。

チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントの比較


以下では、チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントを比較しています。焦点、定義、目的、プロセス、ツール、スケーリング要素、成功の指標、プラクティショナーなど、両者の特徴を対比しています。この比較は、両者の違いを明確にするためですが、重要なのは、チェンジマネジメントとプロジェクトマネジメントとは、共通の目標に向かって、協力関係にあるという事実です。変革を成功裏に行うという目標です。

定義

チェンジマネジメント ― 構造化されたアプローチとツールを使い、変革の人的側面を管理し、ROI(投資利益率)などの望ましい成果を達成すること。

プロジェクトマネジメント ― 特定の知識、スキル、ツール、テクニックを用いて、人々にとって価値のある成果物を創出すること。
(出典:PMI)

目的

チェンジマネジメント ― 変革の影響を受ける社員が変革に関わり、身に着け、使用するよう促進すること。

プロジェクトマネジメント ― 変革のソリューションが効果的に設計、開発、提供されるようにすること。

焦点

チェンジマネジメント ― 変革プロジェクトの影響を受ける社員やステークホルダー(変革の受入れと活用をする立場の人々)

プロジェクトマネジメント ― 変革のための技術的ソリューションの構築、導入に必要なタスクやアクティビティ

スケーリング要素

チェンジマネジメント ― 変革の性質や影響を受ける組織の特性、「変革の人的側面」の必要度合い

プロジェクトマネジメント ― 変革プロジェクトの技術的側面の度合いや複雑さ

プロセス

チェンジマネジメント

  • Phase 1 – Prepare Approach(アプローチの準備)
  • Phase 2 – Manage Change(変革のマネジメント)
  • Phase 3 – Sustain Outcomes(成果の持続)

(出典:Prosci3フェーズプロセス

プロジェクトマネジメント/ソリューション開発の領域

  •  ステークホルダー
  • チーム
  • 開発アプローチとライフサイクル
  • 計画
  • プロジェクト作業
  • デリバリー
  • 測定
  • 不確かさ

(出典:PMBOK ガイド® 第7版)

ツール

チェンジマネジメント

  • ADKAR® Model
  • レディネスアセスメント
  • リスクアセスメント
  • 影響の評価
  • プロジェクトの健全性評価
  • チェンジマネジメントプラン
    • コミュニケーションプラン
    • トレーニングプラン
    • スポンサープラン
    • 管理職マネージャ―プラン
    • レジスタンスマネジメントプラン

プロジェクトマネジメント

  • 作業範囲記述書(SOW)
  • プロジェクト憲章
  • ビジネスケース
  • 作業内容、プロジェクトの進捗
  • マイルストーンのスケジュール(例:ガントチャートまたはスプリント・リリース計画)
  • 予算
  • リソースの割り当て
  • 進捗状況の調査(例:バーンダウンチャート、カンバンボード)

成功の指標

チェンジマネジメント ― 人的側面の要素を評価する。

  • 影響下にある社員の導入のスピード
  • 影響下の社員による最終的な使用度合い
  • 影響下の社員の習熟度
  • 結果と成果達成*

*結果や成果は個人の受入れと活用次第であり(例:ROIは人に依存)、最も注視するべき要素です。

プロジェクトマネジメント ― 変革の技術的側面を評価する。

  • スケジュール
  • 予算
  • 技術的条件
  • 結果と成果達成*

*組織のベネフィットが実感できないまま、始動、稼働の段階でプロジェクトが成功と評価される場合があります。

実行する人物

チェンジマネジメント ― チェンジマネジメントプラクティショナーだけでなく、組織全体でのサポート体制が必要。

プロジェクトマネジメント ― 変革プロジェクトを担当するプロジェクトマネージャーやプロジェクトチーム。

  • タスク、アクティビティ、リソースの管理をし、技術的側面の業務を実行するプロジェクトマネージャー
  • 組織内の専門家や代表からなるプロジェクトチーム

プロジェクトマネジメントとチェンジマネジメント


変革を成功させるには、プロジェクトマネジメントとチェンジマネジメントの両方が重要な役割を果たします。焦点、アプローチは異なりますが、両者は変革プロジェクトを移行期の状態から将来への状態へと前進させるために重要です。プロジェクトマネジメントとチェンジマネジメントが同時進行的に協力し合い、どう働くのかを理解することが、統一された価値を確立し、変革プロジェクトの確かな土台を築くための最初の一歩となります。

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著者:ティム・クリーシー (Tim Creasey)
ティム・クリーシーは、Prosciのチーフ・イノベーティブ・オフィサーで、世界的に認められたチェンジマネジメントのリーダーです。組織に成果をもたらす変革の人的側面の分野で土台となる最大の知識体系を築き上げました。